生体医工学
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光干渉断層撮影装置(OCT)を用いたモルモット蝸牛における超音波の受容領域探索
堀井 和広小川 博史長瀬 典子森元 伊織安部 力任 書晃
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 167_2

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抄録

 外部からの音は鼓膜を通じて内耳蝸牛へ伝わる。蝸牛内には感覚上皮帯と呼ばれるシート状の組織があり、この上皮帯が音の周波数と一致してナノスケールで振動することで音受容が成立する。ヒトは、鼓膜から伝わってきた20 Hz~20 kHzの周波数の音を受容できる。一方で20 kHzよりも高い周波数の音は鼓膜を通した入力では受容できず超音波とされている。しかしながら、頭部の骨に直接振動を与え骨伝導で入力することで、ヒトでも超音波を聴取できる。この現象は「超音波聴覚」と呼ばれているものの、その基盤となるメカニズムは不明である。そこで本研究では蝸牛に着目し、超音波を受容する領域を蝸牛内で探索した。 超音波の受容領域として蝸牛の最も入り口にあたるHook regionに着目した。麻酔下でモルモットの蝸牛を露出し光干渉断層撮影装置を用いて感覚上皮帯のin vivoイメージングを行った。上皮帯の断層撮影像をHook regionと基底回転で比較すると、上皮帯の厚さはほぼ同じであった一方、上皮帯の幅はHook regionの方が有意に小さかった。さらに、超音波刺激を与えた際のHook regionの上皮帯の振動を計測してみると、刺激周波数と一致した超音波の周波数で振動していた。以上の結果から、Hook regionの上皮帯が物理的に超音波を受容することで超音波聴覚の成立に寄与することが示唆された。

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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