2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 170_2
背景:人工呼吸療法において、挿管チューブのミスマッチや屈曲、気道分泌物の付着などは、気道抵抗の増大と共に患者苦痛の原因となり、各種モニタリング指標へ影響を及ぼす場合がある。
目的:気道抵抗による呼吸負荷が循環呼吸動態や心拍変動周波数解析から得られる指標へ与える影響を分析し、既存指標の有用性を再検討する。
方法:20代の健常男性10名に対して、呼吸抵抗をシミュレーションする回路「Ozacuit SimpleTM」で負荷実験を行った。安静座位5分間の後、気道抵抗を付加した呼吸を5分間行い、ベッドサイドモニタと心拍変動測定器で各種生体情報を計測した。
結果:呼吸数は安静座位時16.7±2.2 /minが呼吸抵抗負荷時4.9±1.4 /minへ有意に減少した。SpO2は安静座位時98.3±0.9%が呼吸抵抗負荷時96.8±1.1%へ有意に低下した。LFpower(msec2)およびLF/HFは、コントロール時に対して呼吸抵抗負荷時で有意に増加した。血圧や心拍出量(esCCO)等の循環指標には有意差が見られなかった。
考察:コントロール時の呼吸頻度0.28±0.04 Hzに対し、呼吸抵抗負荷時は0.08±0.02 Hzであるため、気道抵抗付加によるLF成分(0.04-0.15 Hz)の増加は呼吸性変動によるものだと考えられる。
結語:心拍変動周波数解析から呼吸動態を計測でき、患者の苦痛を示す評価項目として利用できる可能性が示された。機械学習等の手法を用いて心拍変動をリアルタイム評価できれば、その有用性はより高くなる。