生体医工学
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微小気泡と音響放射力による血管内皮細胞の流路内捕捉および培養条件の検討
野口 彩子渡部 舜也伊藤 芳樹宮本 義孝小俣 大樹鈴木 亮桝田 晃司
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 177_1

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抄録

近年、再生医療において人工血管の作製が重要な技術として注目され、生体適合性に優れた人工血管の研究が盛んに行われている。このうち線維芽細胞による2層のマイクロチューブを形成する研究[1]では、直線構造の作製に成功したが、リング構造を積層のため実現可能な形状に限界がある。これに対して我々は、微小気泡と超音波を用いた細胞の動態制御を行ってきた[2]。しかし捕捉された細胞分布は音圧分布に依存するため局在的であり、その後の培養に適していなかった。

そこで本研究では干渉音場を形成し、音響エネルギーの空間分布を分散させ、細胞の培養に適した捕捉条件の検討を行った。

脱気水で満たした水槽中に幅2 mm×高さ1 mmのPDMS製直線流路を設置し、流れの方向とのなす角が60°と120°の各位置にそれぞれ超音波音源(中心周波数3 MHz、ビーム幅4 mm)を設置した。流速10 mm/s で濃度10×104 cells/mL の細胞懸濁液を流路に注入し、音波を60 s 照射した。細胞はウシ由来の血管内皮細胞を用いた。

各音源の最大音圧をそれぞれ変化させ、捕捉された細胞分布を計測した。各音源を単独で使用した場合は、音圧に対する面積変化に差がなかったが、両音源を同時に使用した場合は、捕捉された細胞の面積は最大で1.3 倍、細胞分布の流速方向の長さは2 倍に広がり、捕捉細胞の局在性を解消できた。

本研究により、細胞を捕捉した状態から培養するための基礎的なパラメータを導出できた。

[1] T. Yue, et al, Micromachines, 2019

[2] T. Chikaarashi, et al, Jpn. J. Appl. Phys. 2022

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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