2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 182_1
本研究の目的は、断続性ラ音の解析に用いられる特徴量の妥当性を評価することである。聴診によって聴取できる肺音は呼吸音と副雑音に分けられる。断続性ラ音は副雑音の一種である。肺音は信号として記録・解析することができ、特に副雑音が持つ特徴は患者の疾患と関連性が深いことが知られている。しかし、肺音から副雑音が持つ特徴のみを抽出することは困難である。そこで肺音を呼吸音と副雑音に分離する信号処理技術が研究されている。この技術を用いて肺音から副雑音を分離することで、副雑音が持つ本質的な特徴を抽出できると考えられる。肺音特徴量として副雑音の周期や周波数などが用いられるが、分離後の副雑音の特徴量の妥当性を評価した研究はない。そこで疑似肺音を用いた特徴量の評価を提案する。呼吸音のみ・副雑音のみが主に聴取できる聴診音を混合したものを疑似肺音とする。疑似肺音から副雑音を抽出する信号処理で得られる信号と混合前の副雑音を比較することで、聴診音から抽出しやすい副雑音の特徴と喪失しやすい特徴を検証する。信号処理には、酒井らのスパースモデルに基づく断続性ラ音の分離法を用いた。振幅最大の半周期の再現率が高いため、その半周期長(LDW)は抽出しやすい特徴量である。立ち上がりや最大ピークから離れるほど波形の再現率が低くなるため、立ち上がりの半周期長(IDW)やLDWを含む二周期長(2CD)は喪失しやすい特徴量である。