2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 181_2
新生児・乳幼児の心肺停止や迅速なライン確保が必要であるがそれが容易でないような危機的状況において,輸液路の確保のため骨髄へ直接輸液する骨髄路確保が重要な救命手段となる.しかし一度骨髄路確保が試みられた骨への骨髄路の再確保は禁じられており,両側脛骨への穿刺を失敗してしまうと,骨髄路確保が困難となる可能性が高まり,致命的な状況となる.骨髄路確保のための穿刺トレーニング機器は既に市販されているが,穿刺ができるファントムのみで穿刺力を計測することはできず最適な穿刺力や操作手技を確認できる機能は無い.そこで本研究は乳幼児の脛骨周辺の生体組織構成を再現し,熟練医の穿刺力をビジュアルリアルタイムフィードバックによってシャドーイングが可能なトレーニングシステムの開発を目的とした.穿刺用生体模擬ファントムは皮膚をシリコンゴム,皮下脂肪をスポンジ,骨膜を和紙,骨皮質を木材で模擬し構成した.穿刺力計測装置はロードセルとA/Dコンバーター,Arduinoを組み合わせた力センサで構成される.計測サンプリングレートは40Hz,0.1N単位での測定を可能とした.シャドーイングシステムはProcessingを用いて熟練医による穿刺力波形を表示し計測した穿刺力を重畳するインターフェイスとした.被験者を用いた評価実験により,本システムを用いたトレーニングにより専門医による穿刺力との相関が高い穿刺が習得できる可能性が示唆された.