2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 205_2
背景血圧変動は心血管イベントのリスクとして知られているが、連続血圧波形より求めた超短期血圧変動の臨床的意義は明らかでない。近年、我々は30分間の連続血圧波形を周波数解析(0.01~0.1 Hz周波数帯のパワーを積分)することで超短期血圧変動を定義し(BLI: Blood pressure lability index)、臨床的意義を検証している。心機能の低下は心拍出変動の低下につながるために血圧変動も低下し得る。本研究では犬の段階的左心機能低下モデルを用いて、BLIの変化を検証した。方法麻酔下の犬(N=6)を使用し、マイクロビーズを冠動脈に注入し、微小塞栓による心筋虚血を誘導した。2週間おきに微小塞栓手技を繰り返すことで段階的な左心機能低下モデルを作成した。連続血圧を上行大動脈にて30分間測定しBLIを算出するとともに、左心室圧や心臓超音波検査の変化を2週間おきに記録した。結果冠動脈微小塞栓は犬が40%前後の左室駆出率になるまで繰り返した(6±2 回)。微小塞栓によって有意に左室駆出率は低下し(正常: 66±4 vs. 最終評価時: 38±6, %, P<0.01)、左室拡張末期容量が増加した(23±4 vs. 36±4, ml, P<0.01)。麻酔下の平均血圧に変化はなかったが(104±19 vs. 94±13, mmHg, N.S)、左室駆出率に伴ってBLIの有意な低下を認めた(0.7±0.2 vs. 0.4±0.1, mmHg, P<0.05)。まとめBLIは、犬段階的左心機能低下モデルにおいて、左室駆出率に伴って低下した。短時間血圧変動解析は、左心機能を含む心不全の重症度を推定できる可能性がある。