2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 212_2
近年、腰痛(LBP)を持つ小児が増加している。LBPは疼痛誘発動作を元に前屈時LBP(LBPAF)と後屈時LBP(LBPPF)に分類され、我々はこれまでに小児LBPAFにおける予測モデル開発について報告した。本研究ではLBPPF予測モデル構築を目的とする。319名の小児(11.7 ± 2.9(平均±SD)歳)を対象に年齢やLBPの既往等の5項目と、LBPPFの有無の質問紙調査を行った。LBPPFは7歳以降、37名(12%)の小児で見られLBPAFに比べて多数だった。また149名(12.7 ± 1.6歳)が筋柔軟性、筋力、持久力測定を完了した。そのうち20名のLBPPF小児を対象にステップワイズ法を用いた多変量ロジスティック回帰を使って予測モデルを構築した。方法としてLBPPF10名と非LBPPF64名をランダムに選びモデルをトレーニングし、LBPPF10名、非LBPPF65名のデータによるテストを50回実施した。モデルの入力は質問紙項目及び測定した変数、出力はLBPPFの有無とした。最適モデルの選択にはF値を用い、また性能評価としてAccuracy、Sensitivity、Specificityを求めた。得られた最適モデルはLBP既往と大腿前面筋柔軟性を有意な説明変数(共にオッズ比の有意確率p < 0.05)に持ち、Accuracy 70.7%、Sensitivity 80%、Specificity 69.2%、F値0.42だった。LBPPFは7歳以降で見られたので10歳以降で見られたLBPAFと比べて若年で発症し、また有病率は高かった。得られたモデルのSensitivity、Specificityは50%を超えており、LBPPF予測が可能であると考えられる。説明変数はLBP既往、大腿前面筋柔軟性増加であった。LBP既往があると椎間板が変性している可能性があり、LBPPF疼痛発生部位である脊柱後方の負担を増大させる可能性がある。さらに大腿前面筋柔軟性が増加すると、猫背様不良姿勢が生じ、脊柱後方への負担がさらに生じると思われる。脊柱後方には痛み受容器が多くあり、また小児の脊柱後方は骨密度が不均一でありストレスが集中する部位を持つため、LBPPFが生じると考えられる。一方LBPAFでは猫背様姿勢に加えて身長増加やそれに伴う大腿後面筋の柔軟性低下、運動活動量増加など複数の因子が重なり発症すると考えられる。またLBPPFは少ない原因で発症するのでLBPAFに比べて早期に発症する可能性があると考えられる。