2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 221_2
【背景】フォンタン手術は、単心室症に対する機能的修復術である。フォンタン循環では、右心室が存在しないため、肺循環は体循環に直列に接続されている。フォンタン循環が破綻する原因として、単心室の収縮能・拡張能の低下、房室弁逆流、肺血管抵抗の上昇などが考えられるが、どのような条件下において植え込み型補助人工心臓による左心補助が有効であるかは、未だ議論が続いている。そこで本研究では、コンピュータ・シミュレーションを用いてフォンタン循環における植え込み型補助人工心臓の効果を検証した。
【方法】心房・心室は時変弾性モデルを、血管系は3要素ウインドケッセルモデルを用いて再現した。植え込み型補助人工心臓は、HeartMate 3を想定した圧流量曲線を用いて再現した。
【結果】単心室の収縮能・拡張能の低下や房室弁逆流に対して補助人工心臓は、有効に心係数を増加させ(1.9から3.2 l/min/m2)、中心静脈圧を低下させることが出来た(20から11 mmHg)。一方で、肺血管抵抗の上昇に対しては、有効循環血液量を増やさなければ、心係数を維持することが出来ず、肺血管抵抗係数5 WU m2以上では、中心静脈圧は15 mmHg以上に上昇することが分かった。
【結語】補助人工心臓による左心補助は、心機能低下や房室弁逆流に対して有効に血行動態を改善するが、肺血管抵抗上昇を伴う場合には、その効果は限定的である。