抄録
殺虫製剤を野外で使用する場合には,同じ条件下でも,製剤の種類,散布方法,希釈方法によって蚊に対する効果は変わってくると考えられる.そこで,今回,雑草等の植生がある野外において,パルスジェット式エンジン煙霧機,全自動噴霧器,背負動力噴霧機等を用いて,フェニトロチオン乳剤,フェノトリン水性乳剤,ピレトリン炭酸ガス製剤を処理し,ケージ内に入れ各所に配置したヒトスジシマカ成虫に対する効果を評価した.その結果,30mの距離を直線状に処理した場合の効力は,ピレトリン炭酸ガス製剤>背負動力噴霧機(3.5L/分噴出ノズル)>パルスジェット式エンジン煙霧機>全自動噴霧器=背負動力噴霧機(1L/分噴出ノズル)のIに高かった.散布量を 10ml/m2とし,扇状に処理した場合も,薬剤の到達距離に関しては直線状に処理した場合と,ほぼ同様の結果であったが,パルスジェット式エンジン煙霧機では地面から50cm背負動力噴霧機では地面から10cmに配置した蚊に対して高い効力を示していた.また,希釈倍率を変えて処理した場合には,処理AI量が少なくなると効果も低くなった.パルスジェット式エンジン煙霧機と背負動力噴霧機を用い,処理AI量を0.01g/m2となるように希釈倍率と散布量を変え(10倍・1ml/m2,100倍・10ml/m2,500倍・50ml/m2),扇状に処理した場合には,いずれの機器においても,処理される有効成分量が同じであれば,希釈倍率や処理量が変わっても効果に違いはみられず,散布場所の面積によって希釈倍率を変更しても,効力変動は小さいことが示唆された.