生体医工学
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拡散相関分光法による深部組織血流計測能の検証:生体模擬ファントムによる検証
中林 実輝絵一之瀬 真志小野 弓絵
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 296_1

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抄録

拡散相関分光法(diffuse correlation spectroscopy: DCS)は、赤血球が近赤外光を拡散する性質を利用して生体組織の血流速度を非侵襲的に計測する光学技術である。DCSでは送光・受光プローブ間距離の約半分の深さまで到達した光を計測でき、計測対象の深度に合わせてプローブ間距離を設定する。しかし、深部の筋組織を計測対象とする場合、得られる計測信号には浅部の皮膚組織の血流情報が混入するため、どの程度筋血流情報が含まれているかはいまだ詳細に解明されていない。本研究では、皮膚組織と筋組織を模した2層の生体模擬ファントムモデルに既知の速度で疑似血液を還流させ、DCSシステムの深部血流計測能の検証を行った。ファントムは皮膚組織を模した浅層の厚さを5.5 mm、筋組織を模した深層の厚さを30.0 mmとした。送光・受光プローブ間距離は10,20,30 mmに設定した。各層の流速と各計測深度における血流速度指標は線形な関係性を示し、2層の各流速の組み合わせによって各プローブ間距離の血流速度指標およびその導出の過程で算出される光強度の自己相関関数に変化が生じた。つまり、1種類のプローブ間距離で計測した場合は2層の流速を区別することは困難だが、複数のプローブ間距離の血流速度の情報を併せて検討することで、2層それぞれの流速を推定できる可能性が示された。

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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