生体医工学
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自己穿刺の現状と期待:在宅血液透析の見地から
小川 智也佐々木 裕介長谷川 総子金山 由紀安田 多美子清水 泰輔長谷川 元
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 83_1

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抄録

 人工臓器領域における腎代替療法は日進月歩であるが、装置や薬剤の進化以外に今あるものを上手に活用する技量の向上にも支えられている。このテーマである在宅人工臓器であるが、在宅血液透析HHDは生命予後の向上とともに、QOLの向上が期待されている治療である。しかし、本邦の透析患者全体の1%にも届かない1000人以下の状況で広い普及が望まれるが、妨げる一因としてバスキュラーアクセスの問題がある。現行では鋭利な穿刺針を使うため、自宅での非医療者の穿刺は法律的には認められず、現在HHDを行っている患者も自己穿刺は大きなハードルだったと言える。 自己穿刺は通常穿刺を自己で行うだけという単純なものではない。穿刺の準備から血管の観察、消毒、穿刺、留置後の回路接続と固定、どれをとっても自己完結するには根底から考える必要がある。一つだけ例を挙げると、穿刺者の目と針と患者の皮膚穿刺点が一方向になることで正確な穿刺が可能になるが、自己穿刺ではこれらを直線的に捉えにくいので、マニュアル通りに指導しきれない理由でもある。 穿刺補助になるデバイスの開発や、穿刺針自体の改良が必要であるとともに、その教育方法にも大きな工夫が必要と思われる。また、カテーテルやアクセスポートなどの新たなデバイスも期待される。臨床現場における見地から、より良いHHDのVAを得るために必要な取り組みなど、皆様と問題を共有したいと思う。

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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