2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 83_2
採血業務は,患者にとっては大病院などでの長い待ち時間や血管が見えにくいことによる穿刺の失敗,医療従事者にとっては針刺し事故などによる感染症のリスクや長時間業務による負担など,様々な問題を抱えており,自動化が期待されている。近年,海外ではプロトタイプ機が開発され,最終段階の臨床試験まで進んでいる。このような装置では,血管位置の計測に超音波画像が使用されており,患者と接触する必要がある。一方著者らは,できるだけ患者と非接触で血管穿刺することを目標に,赤外線ステレオカメラを利用した血管位置の3次元推定法を考案し,これまで透明ゲルを使った模擬皮膚内の模擬血管を対象とした自動穿刺実験を行っている。また,模擬血管壁を貫通したときの力覚の変化と,採血針への逆血を検出することにより,穿刺成否を判断する制御システムを開発している。これまで,深さ4mmおよび6mm,内径2mmおよび3mmの模擬血管への自動穿刺の実験を行い,85%程度の成功率が得られている。ただし,実際の皮膚では光の屈折および拡散の影響により,見た目の血管位置は浅く推定されることが確認されており,今後は屈折および拡散を模擬した模擬皮膚の中の模擬血管の深さを精度よく計測する技術の開発が必要である。また,採血熟練者が血管穿刺のために行う手技を計測し,ロボットに実装することで,確実な血管穿刺を実現する制御方法の実現を目指している。