生体医工学
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非侵襲光計測による血液透析中の下肢筋血流モニタリング
小野 弓絵中林 実輝絵
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 84_1

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抄録

血液透析中に生じる血圧低下や有痛性筋痙攣などの透析合併症は、患者の苦痛や透析の中断を招いてQoLを低下させるため、その原因の究明および予防が喫緊の課題となっている。我々は組織血流の速度を非侵襲的に計測する新しい光学技術である拡散相関分光法(diffuse correlation spectroscopy: DCS)を用いて血液透析中の前脛骨筋血流を連続的に計測し、透析患者の血圧低下メカニズムの解明と早期検出法の開発を目的とした研究を行っている。透析中に計測した末梢血流量と平均血圧から算出した末梢血管抵抗の透析時間全体の平均値は透析終了時の血圧との間に有意な相関を認め、透析後血圧低下を呈する症例では、除水による血液量の減少にも関わらず末梢血管抵抗が増加せず、末梢血流が増加するために心拍出量の低下と動脈圧の低下に至る可能性が示された。また、この相関関係は透析時間全体の50%経過時までの末梢血管抵抗と透析終了時血圧との間でも維持されており、透析時間全体の50%、75%の時点において、透析終了時の血圧低下をそれぞれ87.5%、75.0%の感度で検出することが可能であった。透析中の筋血流計測は透析中に生じる血管調節不全を検出するうえで有用であり、今後、透析中合併症の予測・予防システムへの応用が期待できる。

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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