2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 124_1
心肺蘇生中に脳のバイアビリティを維持するには、最低でも正常な脳血流の20%が必要と言われている。近代蘇生の父であるDr.P.Safarは1980年代から“ Cardiopulmonary-Cerebral Resuscitation”と、脳蘇生を重視していた。しかしその後の心肺蘇生は、早期の除細動/心拍再開/冠動脈再開療法など、心臓の評価治療に重点が置かれてきた。これは心肺蘇生中に心電図や自動体外式除細動器など心臓を評価治療する機器はあったが、脳を評価する機器は存在しなかったからと考えられる。
一方、近赤外線分光法(NIRS:Near-Infrared spectroscopy)は、前額部に装着し酸素化・還元ヘモグロビンの変化から脳組織酸素飽和度(rSO2)を測定することができる。1995年に心停止に初めてNIRSを使用した報告があり、その後機器の進歩もあり、2010年代に入ると多くの院外・院内心停止にNIRSを用いた論文が発表され、心停止患者のrSO2初期値・平均値・最高値・ΔrSO2全てがより高値のほうが、心拍再開し神経学的予後も良好であった。
我々は、このNIRSを用いたNIRO-200NXを改良し、NIRO-Pulseを開発した。これは酸素化・還元ヘモグロビンの変化を波形として捉え、胸骨圧迫中の脳循環を評価している。
胸骨圧迫の質として深さや速さなど評価するが、これらは胸郭をどう押しているかであり、押した結果どう循環が回っているかは不明であった。胸骨圧迫中に脳循環や脳に酸素が回っているかをNIRSでリアルタイムに評価し、良好な脳循環を得られるように心肺脳蘇生を評価することが可能となった。