2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 139_1
世界糖尿病連合の発表によるとほぼ世界中のどの地域においても糖尿病の有病率は約10%前後であると報告されている。つまり現在の世界人口推計約80億人のうち8億人の糖尿病患者が存在することになる。糖尿病という病気の医学的問題は、全身の様々な臓器に合併症が発生することにある。特に三大合併症の一つである糖尿病性足病では、足が大きく切断されて歩行できなくなる患者多く社会問題となっている。この糖尿病性足病の発生率は1~4%の間で推移しおり、重症化を防ぐためには足病の健康診断を行い軽症の時点で疾病を行わなければならないが、8億人の健康診断を実施することはマンパワーの点でもコストの点でも現実的ではない。そこで足病患者の足画像を人工知能に学習させ、画像による健康診断を行う研究開発に取り組んでいるので報告する。
実際に研究開発を進めてみると、重症足病の正診率は比較的高められるものの、微細な変化しかない初期病変を検出させることは非常に難しい。そこで、画像のみの診断精度向上にこだわるのではなく、問診データを追加するもしくは診療フロープラグラムを組み合わせることで現実的な正診率向上にも取り組んでみているところである。プログラム医療機器の最大のメリットである人間では困難な量の画像情報の処理により、従来では困難であった社会課題の解決につながる取り組みとなることが生体医工学に求められている重要な要点の1つと考える。