生体医工学
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不整脈放射線治療の精度向上にむけて心臓画像検査が果たす役割
網野 真理株木 重人国枝 悦夫橋本 順山下 高史柳下 敦彦伊苅 裕二下川 卓志吉岡 公一郎
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2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 142_1

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抄録

心臓突然死の要因となる心室頻拍(VT) に対する治療は、抗不整脈薬、植え込み型除細動器、高周波カテーテルアブレーション(RFCA)の3つが主体である。従来治療に治療抵抗性の患者に対する救済治療として心臓定位放射線治療 (Cardiac-SBRT) の手法が2017年にワシントン大学から報告され (NEJM)、米国と欧州を中心に症例数が蓄積されてきた。米国では現在, RFCAとCardiac-SBRTを直接比較する治験が開始されている。欧州では10億円相当の研究費を有した “STOP STROM” と呼ばれる多施設研究プロジェクトに8カ国30施設が参加している。残念ながらアジアおよび我が国の大幅な研究立ち遅れは否めない。

治療の実際は、心電図情報とCT, SPECTなどの画像データを使用して治療計画を作成し、体外から心臓局所に放射線照射を行う。諸外国の臨床研究をまとめたメタアナリシスでは、治療後6か月間のVT抑制率は92%, 1年後の生存率は82%と優れている。照射時間は10分程度と低侵襲性であり、疼痛などの苦痛も生じない。いっぽう、ターゲット設定に関する医師間のVTターゲットの描写にばらつきが多く、基本的ワークフローを用いたターゲティングの標準化が喫緊の課題となっている。ひとつの要因として、放射線腫瘍医にとっては体軸断面CT撮像が一般的であり、循環器内科医は心軸断面像での評価が見慣れていることから、解剖学的オリエンテーションのすり合わせに困難を生じていることが挙げられる。われわれは心臓核医学とCTの同時撮影によりこうした問題点の糸口を提案したい。

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© 2024 社団法人日本生体医工学会
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