2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 179_2
スポーツの現場において、怪我の予防やパフォーマンス 向上等のためにウォーミングアップが行われている。先行研究では、静的ストレッチ等に比べて 動的運動を用いたウォーミングアップの方がその後の運動において心肺への急激な負担が軽減するなどの効果 をもたらすことが示唆されている。また、運動の繰り返しが活動筋へ血液を供給する導管動脈の血流量を増加させることが知られているが、活動筋自体の供給血流量 についてはエビデンスが少ない。本研究では、近赤外光により非侵襲的に末梢組織の血流速度指標 (blood flow index: BFI) を測定可能な拡散相関分光法 (diffuse correlation spectroscopy: DCS) を用いて、動的なウォーミングアップが活動筋の末梢血流動態に及ぼす影響を検討した。被験者(若年成人13名)は2秒収縮、2秒弛緩の動的 掌握運動を最大随意筋力の30%の強度で5分間行った。この運動を5分間の安静を挟んで2回繰り返し、1回目をウォーミングアップ運動として、2回目の同運動時の血流応答と比較した。 実験の結果、2回目の運動前安静時および運動時では1回目に比べて全時間でBFIが増加していた 。ウォーミングアップにより運動開始前の活動筋への血液循環が促進され、同一強度で運動を行った場合でも2回目の運動の方がより多くの血液が活動筋に供給されることが明らかとなった。