生体医工学
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UMAPによるAMPA受容体濃度PETからの精神疾患情報の抽出
木村 裕一野口 日奈子津川 幸子有澤 哲阿部 弘基高橋 琢哉
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2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 202_2

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抄録

【はじめに】脳における主要な興奮性神経系を構成するAMPA受容体の濃度は、新規に開発した放射性リガンドである11C-K2を用いたPET撮像によって入手可能となった(Miyazaki, Nature Med, 2020; AMPA-PET)。そこで本研究では、AMPA-PET画像に精神疾患に由来する情報が内包されているかUMAPアルゴリズムを用いて検討した。【方法】AMPA受容体は主たる興奮伝搬系であるが故に、精神疾患以外の、例えば性別や年齢といった交絡因子の影響が大きく、これが疾患情報の抽出に影響する可能性がある。一方UMAPは、確率モデルを仮定することなくトポロジーに基づいて特徴量空間におけるデータの分布を可視化するアルゴリズムであり、更に特徴点同士の関係に、精神疾患や交絡因子の情報を重畳させることが可能である。そこで、健常者、自閉スペクトラム症候群、双極性障害、鬱病、統合失調症、計251症例に対してAMPA-PETを実施し、Hammers Atlas (Hammers, Human Brain Map, 2003)を使用して全脳を75部位に分けた特徴量とした後、これをUMAPで2及び3次元に射影した。尚、PET撮像は、撮像が実施された各PET施設の生命倫理委員会の承認の下で実施した。【結果】脳局所でのAMPA受容体濃度を全脳で正規化した方が、疾患に基づいた特徴点の修正によく反応した。その結果、UMAPによって次元縮約された各被験者は、精神疾患毎のクラスターを構成した。【結論】以上から、AMPA-PETには精神疾患に関する情報が内包されており、疾患の鑑別には全脳正規化が有効であることが示唆された。今後は、精神疾患鑑別アルゴリズムへのUMAPの適用を検討する。

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© 2024 社団法人日本生体医工学会
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