2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 274_2
骨伝導で呈示された20 kHz以上の高周波(骨導超音波)は明瞭な音として知覚される.また,骨導超音波は頸部,体幹,上肢等の頭部から離れた位置(遠位)に呈示された場合も容易に知覚される.骨導超音波は音漏れや振動覚を伴わないといった特長を有すことから,振動子に触れた対象者のみに音情報を伝達可能な新型オーディオ・デバイスへの応用が図られている.
通常の骨伝導では,振動子は金属製のヘッドバンドで頭部(乳様突起等)に圧着される.一方,遠位呈示骨導超音波では上肢や体幹に巻いた伸縮バンド等で振動子を圧着するが(圧着方式),長時間の装用に伴う痛みや見栄えが悪いといった問題があった.本研究では,粘着テープによる振動子固定方式(粘着方式)を提案し,従来法との間で遠位呈示骨導超音波の聞こえを比較した.
3Dプリンタで製作した治具に,上面の穴から振動面がわずかに突出するように振動子を取り付けた.粘着テープは市販のものを2種類使用し,治具上面に振動面を囲うように,もしくは振動面そのものに取り付けられた.骨導超音波を乳様突起,頸部,胸部,および背部に粘着呈示し,30 kHz トーンバーストに対する検出閾推定を行った.検出閾は粘着テープの貼付位置や厚さにより変化したものの,テープを治具上面に貼付け,振動子を胸部,背部に呈示した場合は圧着方式と遜色ない検出閾が得られた.粘着方式が実用的な呈示方法になりうることを示している.