2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 306_1
我々は,これまで脳波を用いて空間周波数が潜在的意識に与える影響について検討を行ってきた.既往の研究では潜在的連合テスト(Implicit Association Test: IAT)に伴う自発脳波の時間―周波数特性について,Wavelet変換を用いて検討を行ってきた。ここでWavelet変換は,マザーウェーブレットを使う性質上,時間―周波数分布の解像度に制限が生じる.これは特に認知活動に密接な関わりがあるとされる4 – 8 Hz程度の低周波数リズムを持つシータ波の解析精度に影響を与えている可能性がある考えられる.そこで本研究では,Wavelet Synchro-Squeezed変換を用いた.この方法は時間分解能を保持しつつ,周波数領域へのエネルギー再割り当てを行うことで周波数分解能を向上させる方法であるため,低周波数でも高い時間―周波数分解能が期待される.実験では,空間周波数が潜在意識に与える影響を調べるため,IATのターゲット画像の背景に,高空間周波数,低空間周波数,単色の3種類の空間周波数の特性を有する画像を配置し,IAT遂行時の自発脳波を評価した.Wavelet Synchro-Squeezed変換の結果は,Wavelet変換と比較すると,時間―周波数分布において全体的に非常に良く似た概形を示す一方,低周波数領域において,周波数分解能として数Hz程度,時間分解能として数10 ms程度の局所的な変動が観測された.また、中・高周波数領域においても,同様の傾向が観測された.