2024 年 Annual62 巻 Abstract 号 p. 310_1
【背景】椅座位姿勢は日常生活において必要不可欠であるが,腰部に大きな負担のかかる姿勢状態であり腰痛が生じやすい.本研究では背もたれ角度,座面角度,腰掛深さを変えた椅座位姿勢における腰部応力分布を解析し,疼痛発生部となりやすい腰部椎間板と仙腸関節部への負荷変化を可視化した.
【方法】被験者6名に対して椅座位時の背もたれと座面における体圧分布を圧力センサを用いて測定した.各椅座位状態を脊椎と腰部の有限要素モデルで再現し,体圧分布測定結果をもとに腰部応力分布を解析した.
【結果】背もたれを後傾させると座面部にかかる圧力が減少した一方,背もたれ部にかかる圧力が増加した.座面を前傾させると背もたれ部にかかる圧力が減少したのに対して,腰掛深さを浅くすると増加し,また,いずれの条件においても仙骨部の座面圧が増加した.有限要素解析の結果,仙腸関節部および第5腰椎-仙骨間の椎間板にかかる相当応力は深く腰掛けた状態から5 cm浅く椅子に腰掛ける姿勢および座面角度を5度前傾させた椅座位時に低値となった.
【考察】前傾した座面での椅座位,浅い腰掛けはともに体幹-大腿角が大きくなる座位姿勢であり,上肢と下肢をつなぐ仙骨部にかかるモーメントが減少することによって腰部にかかる負荷が減少したことが考えられた.ただし,過度の角度増加は骨盤後傾の誘引や仙骨部への荷重によって負荷の増加につながり,各条件には至適領域が存在することが示唆された.