生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
深層脂肪領域の動的設定および拘束力条件に基づく乳房変形シミュレーション
隋 伯涵藤本 浩司那須 克宏中口 俊哉家永 直人黒田 嘉宏
著者情報
ジャーナル フリー

2025 年 Annual63 巻 Proc 号 p. 436-438

詳細
抄録

乳がんの手術において、患者は仰臥位(仰向け)の体位で手術に臨む。一方、術前MRI検査では一般的に伏臥位(うつ伏せ)で撮影が行われる。従って、伏臥位で撮影された乳房画像データを仰臥位に正確に変換する技術が望まれている。乳房が大きく変形する要因の一つに深層脂肪組織が関与しており、これまでに深層脂肪を考慮した乳房形状の変形手法が提案されている。しかし、乳房の深層脂肪領域が一律の厚みで表現されており、乳房サイズに伴う深層脂肪領域の個人差は考慮されていなかった。本研究では、乳房サイズに応じた深層脂肪領域の動的な分割と乳頭との接続による深層脂肪の拘束を表現することを目的とする。一部の乳房MRI画像では、深層脂肪が乳頭方向の引張力を受け、中央が突出していることが確認された。本研究では、この状況を再現するため、深層脂肪領域を従来の平坦な形状から中央が突出している形状に変更し、乳頭と深層脂肪間に新たな拘束力を導入し、拘束力を考慮したモデルを構築した。3名の伏臥位MRIデータに対して、提案手法を適用し、乳房の腫瘍位置の推定誤差に対して対応のあるt検定を有意水準5%で実施した。その結果、統計量はt (2)= 4.40となり、従来手法に比べて統計的に有意に誤差が減少することが確認された。

著者関連情報
© 2025 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top