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白石 公, 山岸 正明, 盤井 成光, 畑中 克宣, 竹田 正俊, 黒嵜 健一
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
347-348
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
An accurate understanding of the anatomical structure and cardiac function is crucial for successful surgical operations in complicated congenital heart diseases (CHDs). We have developed super flexible polyurethane-based 3D heart models of CHDs by employing stereolithography 3D printing followed by vacuum casting techniques. To evaluate whether the super flexible heart models facilitate preoperative decision-making and surgical simulation in complex CHD, we have conducted a physician-led clinical trial. The multicenter clinical trial confirmed that the super flexible heart models were useful and safe to help surgeons in the decision-making process, with no significant adverse events. The super-flexible heart model was finally approved as an authorized medical device by the Japanese Ministry of Health, Labor, and Welfare in 2023. In addition, we have applied for reimbursement by public insurance to cover the cost in 2025.
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土谷 智史, 北村 直也, 小林 巧明, Wani Shadil
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
349-350
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
遺伝子改変ブタの臓器や、胚盤胞補完法によって動物の体内で作成されたヒト化臓器が、臓器不足の新たな選択肢として脚光を浴びている。一方で、バイオリアクター内で臓器を作成するという医工学的な臓器再生研究も、多くの研究者が力を注いできた分野である。この手法の強みは、素材選択の多様性と動物の成長期間に依存しない圧倒的な作成期間の短さである。つまり、ヒトiPS細胞、動物の組織骨格、成長因子など、Tissue engineeringの3要素を選択して組み合わせ、短い周期でトライ&エラーを繰り返しながら理想的な作成物に辿り着くことが、理論的には可能である。
肺は、常に呼吸運動による拡張と収縮を繰り返す動的臓器であるが、分岐する気管-気管支と呼吸の場となる肺胞-毛細血管網のネットワークがガス交換という肺の機能維持に必須である。動物の臓器を界面活性剤で“脱細胞化”した臓器骨格は、臓器の微細構造と“やわらかさ”をそのまま維持できるため、肺の臓器再生に最も適した素材であると考える。
私たちは、ラット肺を利用して、脱細胞化臓器骨格に細胞を播種して“再細胞化”する“細胞置換法”に10年以上取り組んできた。細胞置換法の素材となるTissue engineeringの各要素についてどのような取り組みを行ってきたか、また組織/臓器工学での新しい知見として、臓器作成過程でのメカニカルストレスの重要性について提示する。
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色部 俊昭
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
351-352
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
近年、医療現場において電波の利用が拡大している。その一方で、電波に関するトラブルも顕在化しており、総務省が2024年度に実施した全国の病院(約8,000施設)を対象としたアンケート調査によれば、医用テレメータについては、導入する病院のうち約4割がトラブルの経験があると回答している。電波利用が多様化する中、トラブルの防止だけではなく、業務の効率化や患者の利便性向上に資するため、適正な電波環境の管理の重要性は増しており、医療関係者向けのガイダンス、人材育成が必要とされてきた。このため、総務省では、医療機関、関係団体、行政が連携する体制を構築し、医療機関での電波の利用拡大に伴うトラブルの原因や対応方法に関する情報提供、電波管理を担う人材の育成支援等に取り組んでいる。本稿では、医用テレメータの電波管理を中心に医療機関において安心・安全な電波利用を推進するための取組の概略をご紹介したい。
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鎮西 清行, 西田 正浩
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
353-355
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
医療機器開発ガイダンスは,実用化が見込まれる新規性の高い医療機器の研究開発を促進するための技術文書です.開発ガイダンスは経済産業省(AMED)が策定しています.これと併せて,厚生労働省が作成する「次世代医療機器・再生医療等製品評価指標」(以下,「評価指標」)を参照することで,医療機器の開発から評価・薬事申請までを円滑化・迅速化することが期待されます.医療機器開発ガイダンスを効果的に利用することで,革新的な医療機器を開発しようとする企業は,開発上の隘路を事前に同定して不確定要素を減らすことができます.これにより開発工数,試験期間やコスト等の予見性を高めることで,プロジェクトに関する社内の理解,実施判断を得ることが容易になると期待されます.最終的には我が国発の革新的医療機器の誕生と市場展開に寄与するものと期待されます.
最も効果的な開発ガイダンスの活用法は,開発ガイダンスを策定する側に入ることです.国際標準戦略と同じで,ルールを作る側に立つことでゲームを有利に進めることができます.更に,開発ガイダンステーマを自ら提案することで,議論の主導権を取ることもできます.この発表では,開発ガイダンスの提案に際して考慮すべき事項をいくつか紹介します.(AMEDの課題番号JP23he0822003の支援を受けた)
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榎本 幸佑, 鳴海 敏行, 村杉 浩, 友利 浩司, 岡田 浩一
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
356-358
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
血液透析患者のバスキュラーアクセス(VA)において、超音波画像診断装置を用いた機能・形態評価を含む多角的な評価方法を用いたVA管理は重要であり、その有用性が示されている。しかしながら、VA超音波検査には高度なプローブ走査技術と血管の3次元形状をイメージする空間把握能力が必要不可欠であり、検者の経験によって血管の評価に差が生じる可能性がある。本研究ではVA超音波検査で得られた2次元の超音波画像から血管の3次元形状モデルを作成し、血管走行の把握が可能か検討した。3次元形状モデルを作成するプログラムは自作し、シャント血管を模擬したモデルに対して短軸方向に走査した際の超音波画像を用いて、3次元形状モデリングを行った。自作したプログラムによって作成した模擬血管の3次元形状モデルと事前に測定した模擬血管の平均誤差は短径:-0.40㎜、長径:-0.22㎜、表面からの深さ:+0.82㎜であり、血管走行の把握に関して十分対応できる精度結果が得られた。また3次元形状モデルは自由に回転表示することが可能であるため、血管を上下左右様々な角度から観察することで、血管走行をより詳細に把握することが可能であった。本研究の手法では短軸方向への走査で得られた超音波画像のみで3次元形状モデルを作成するため、動画像保存機能を有している超音波画像診断装置であれば血管の3次元形状モデリングが可能となり、これによる医療施設間の詳細なVA情報の共有が期待できる。
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和田 結佳, 中井 浩司, 平松 武幸, 小嶋 和恵, 川畑 駿太郎, 中嶋 貴, 平手 裕市
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
359-361
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
【背景】透析中低血圧患者において、非侵襲連続推定心拍出量(esCCO)は循環動態悪化の早期検知に有用であることを我々の先行研究で報告している。esCCOは脈波伝播時間(PWTT)と一回拍出量(SV)の逆相関性に基づく技術であり、PWTTと血圧(NIBP)の相関性を検証する過程で開発された。本研究では、透析中のPWTTとNIBPの相関性の違いをもたらす要因として、患者背景および循環動態に関連する指標について検討することを目的とした。
【方法】本研究は倫理委員会の承認を得て、40名の透析患者を対象に実施した。ベッドサイドモニタBSM-6701を用い、シャント肢示指にesCCO測定用SpO2プローブを、対側上腕にNIBPカフを装着した。PWTTと収縮期NIBPの相関係数を基準に高相関群15名(r≧0.60)と低相関群25名(r<0.6)に分類した。検討項目には、患者背景、透析条件、透析開始時の非侵襲連続推定1回拍出量(esSV)、脈動率など、循環動態関連因子とした。
【結果】PWTTは、高相関群213.1±15.5ms、低相関群217.1±28.7ms(p=0.655)で有意差はなかった。患者背景では、年齢(67.0±8.6歳 vs 73.8±11.5歳、p<0.05)が低相関群で有意に高く、糖尿病や心血管病の有無、透析歴に差はなかった。透析条件(除水速度、除水量、最大⊿BV)に差はなく、循環指標では、高相関群でesSV(88.3±22.0mL vs 73.3±19.8mL、p<0.05)、脈圧(79.1±18.0mmHg vs 65.4±19.2mmHg、p<0.05)が有意に高かった。心拍数、脈動率などに差はなかった。
【結論】高相関群と低相関群の比較では、年齢、esSV、脈圧に有意差が認められた。この結果から、PWTTと血圧の相関性が血管性状や心機能を反映する可能性が示唆された。
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田中 幹飛, 高橋 泰岳, 村元 暁文, 築地原 里樹
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
362-364
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
病理診断は患者から採取された生体組織を病理医が観察して行う医療行為であり,様々な疾患に対して確定診断となることが多い.一方で,診断時には各組織型の占拠割合の記載が必要となるが,本研究で取り扱う精巣腫瘍は,症例が少ない組織型や複数の組織型の混在等があるため,割合を求めるための作業負荷が大きい.深層学習を活用し,診断前に組織型ごとにその大まかな割合が算出できれば,診断コストを大幅に削減できると考える.
本研究では,深層学習アルゴリズムであるYOLOv8-segを用いて,病理切片染色画像から精巣腫瘍の組織型を学習させ,推論を行う.組織型ごとにアノテーションを行った5枚の病理切片染色画像を用いた.含まれる組織型は,胎児性腫瘍,絨毛癌,卵黄嚢腫瘍,奇形腫である.各画像を細胞が視認できるレベルまで細かく分割し,データセット数700枚程度で追加学習を行った.正常領域を含めた画像全体の正解率は1枚目97.47%,2枚目86.51%,3枚目60.45%,4枚目89.88%,5枚目96.49%となった.用意した画像は,主に胎児性腫瘍の領域が大きく,胎児性腫瘍以外の4種類の領域は微小領域であったため,正解率への影響は小さい.そのため,今回の正解率の高さは,胎児性腫瘍の領域の検出精度の高さと言え,最も卵黄嚢腫瘍と奇形腫の領域が大きい3枚目の画像では学習が不十分のため,正解率が低い.今後の展望として,さらに10枚程度の画像を追加し,胎児性腫瘍の領域以外の精度を上げたいと考える.
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小野寺 博和
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
365-367
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
血液浄化用膜において、これまで様々な方法で生体適合性の評価が開発されている。ISOにおいても生体適合性規格があるが、医療機器の生体適合性評価の主な目的は、患者を生物学的リスクから守ることに主眼が置かれている。本邦においては、日本透析医学会が血液浄化器の機能分類2023で、S型で生体適合性があるが、明確な評価法は示されていない。そこで、生体適合性を評価する一つの考え方として、膜が有する抗酸化能を定量化する評価技術について開発を行った。
抗酸化能の定量法とし、抗酸化能の測定法であるPAO法(銅還元性)を改良した方法で検討した。固液系で接触により、膜の抗酸化能が測定するため、接触させる溶媒の影響等について、ビタミンE固定化膜とポリスルホン膜を用いて行った。
評価液として、エタノール・水系を用いることで、膜からの溶出の影響を低減し、水不溶性の抗酸化物質を有する膜において抗酸化能を測定することが可能であった。
更に、銅の還元の観点から、通常、抗酸化物質を有さない場合においても、材料自体の酸化も確認できた。
新たな生体適合性の一つとして、本評価法が水系で膜自体の有する抗酸化能を評価できる可能性が示唆された。
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磯貝 日向子, 村橋 成紀, 中村 光宏, 中尾 恵
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
368-370
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
放射線治療や外科手術など治療時のイメージングにはモビリティと実時間性が求められるため、小型で高速に撮影が可能なCone-beam CTやX線投影像が利用される。近年、より少ない投影数のX線投影像からCT画質相当の画像生成を達成する機械学習モデルが注目され、敵対的学習や拡散モデルが探索されているが、その3次元化や解像度の向上、臨床における撮像条件への対応など課題が残っている。
本研究では、条件付き潜在拡散モデルを用いた挟角CT画像再構成を目的に、全投影条件と挟角条件で得られる画像から潜在表現を獲得し、再構成画像を直接的に得る枠組みを提案する。3D-CT画像から疑似X線画像を作成し、その一部からFeldkamp-Davis-Kress(FDK)法による逆投影によってアーチファクトを有する挟角条件画像を作成する。作成した挟角条件画像と対応するCT画像から同一のエンコーダで潜在表現を得て、CT画像の潜在表現を復元するように拡散モデルを学習する。
118症例の腹部領域3D-CTデータを対象に学習した提案モデルの画像生成能を13症例のデータを用いて確認した結果、生成画像において、狭角条件画像のアーチファクトが改善され、臓器内部のCT分布が再現されていること、挟角になるほど輪郭部に誤差が生じることが確認された。
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村橋 成紀, 中村 光宏, 中尾 恵
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
371-373
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
Cone-beam Computed Tomography (CBCT)画像は,CT画像に比べてコントラストが悪くアーチファクトを多く含む.このことは診断や治療の妨げとなるため臨床医療における問題となっている.CBCT画像の画質改善についてはこれまでにも研究がなされているが,臓器変形が生じやすい領域では画質改善の前後で解剖学的構造が変化するという課題がある.本研究では,疑似CBCT画像を活用した条件付き潜在拡散モデルに基づくCBCT画像の画質改善方法を提案する.CT画像に対してサイノグラム領域と画像領域の双方で処理を行い,CBCT画像にみられるアーチファクト等の画像特徴を有した疑似CBCT画像を作成した.この疑似CBCT画像をモデルの学習に活用することで,解剖学的構造の維持と画質改善の両立を実現する. 提案手法の有効性を確認するため,66例の骨盤部CT-疑似CBCTペアデータを用いて学習したモデルを8例の実CBCTデータに適用した.実験の結果,改善前後で構造変化が生じた画素数は従来法の1/1000以下となり,提案手法が解剖学的構造を維持した画質改善に有効であることを確認した.また生成画像と参照画像間のCT値分布の相関係数は0.916となり,従来法と同程度のCT値改善が可能であることを確認した.
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赤澤 堅造, 奥野 竜平, 一ノ瀬 智子, 松本 佳久子, 益子 務
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
374-376
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
重度脳性麻痺のあるこの女性は、58歳になるまで指の自発的な動きが見られなかった。著者らが開発した新しい電子楽器サイミスを用いて、個別介入を開始した。数ヵ月後、彼女は左手の第3指を動かすことができるようになり、バルーンスイッチを使って比較的一定のテンポで演奏できるようになった。曲は「もののけ姫」などである.この演奏法はスイッチをONするたびに、曲の1拍が次々に演奏される様式である。他の指は自発的に動かすことができなかった。演奏を録画したビデオの静止画像を分析することで彼女の指の動きを評価した。彼女は最終的に左手第3指を約40mm動かした。サイミスを演奏するときのテンポは徐々に安定し、約40bpmを計測した。この変化は、IOI(Inter-onset-intervals:スイッチをオンにしたときの時間間隔)を使って調べた。IOIは、屈筋と伸筋の収縮によって起こる指の動きをコントロールする能力を示している。彼女はサイミスを弾くことを楽しみ、数年の間にいくつかの曲を弾けるようになった。本研究は、彼女が58歳の時に、生まれて初めて第3指を動かして演奏したことを示し、運動系の可塑性があることを発見しており,そして筋力の著しい向上をあったことを明らかにしている。
サイミスに関しては,Kenzo Akazawa, et al. (2017) Advanced Biomedical Engineering 6: 1-7, 2017.で報告している.
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田畑 純一, 飯野 杏菜, 黒澤 裕一, 船谷 聖子, 伏見 幹史, 野田 賀大, 関野 正樹
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
377-379
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
近年うつ病や統合失調症,コロナ後遺症の治療法として,経頭蓋磁気刺激(TMS)が注目されている.TMSは,時間変化する磁場を発生させるコイルを用いて体外から脳内部に誘導電場を発生させ,脳の局所的な標的領域を非侵襲的に刺激する治療法である.しかし,深部刺激が出来るコイルほど高い治療効果が期待されているにも関わらず,誘導電場は距離により急速に減衰してしまうため,深部刺激が困難であるという課題がある.
本研究では,逆問題手法に基づき,脳深部刺激に最適なTMSコイルを設計・開発し,評価を行った.小動物へのTMSは,脳の生物学的応答を評価する上で有効な方法であるため,逆問題的手法によって新規動物用コイルを導出・製作した.作製したコイルを駆動回路に接続し,ピーク値7kA,パルス幅278μsの電流,コイル巻線中心にて2.0Tのピーク磁場が得られた.これは一般的なTMSコイルと同程度であり,磁気刺激に適している.
新規コイルと標準的な円形コイルを用いてラットに対して脳磁気刺激を行い,それぞれの群の頭部とコイル間の距離ごとのrMT(安静時運動閾値)を測定した.その結果,2mm以上のとき,新規コイル群の方が円形コイル群よりも距離によるrMTの変化が有意に小さくなった.このことから,新規コイルは誘導電場が距離により減衰しにくく,深部刺激に適したコイルであることが期待される.
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水谷 奏心, 島田 尊正
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
380-382
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
1 背景
人間が生きていくうえでコミュニケーションは必要不可欠であり、それには身体動作が伴う。疾病等により何らかの原因で身体動作ができない場合でも脳活動から直接意思を読み取るBCI技術を用いればコミュニケーションが可能となるが、より短時間でより高い意思判読精度の実現が課題となっている。
2 目的
脳波のμリズムは運動イメージで抑制される。先行研究で手足の運動において色彩の効果を用いてμリズムの抑制が強まったことが報告されているが、本研究ではそれを応用した刺激提示での四肢判別を可能にする手法の検討をする。
3実験方法
被験者には、手足を動かす運動を繰り返している動画を見ながら、同様のイメージをするタスクを課した。動画は四分割されており、各四肢が割り当てられ表示された。又一部位のみ赤色に、それ以外を灰色に着色し、赤色の位置を時間で変化させた。最後に、アンケート調査も行った。
4実験結果
提案手法はチャンスレベルである25%より高い53.8%の正答率を得た。また、アンケート結果からは被験者の利き手および利き足での正答率が高い傾向が確認された。
5 まとめ
結果より、提案手法は四肢判別において効果的であると考えられる。また、利き手足と運動想起の関係性という新たな切り口も発見できた。一方、現段階では実用性を考慮すると十分と言えない精度であり、精度のさらなる向上が課題となるであろう。
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田口 美紗, 藏富 荘留, 吉田 翔平, 平田 雅之
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
383-384
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
目的:発語が困難な患者のコミュニケーション支援として、日常で自立的に使用可能なBMIシステムの構築に注力してきた。本研究では、フリック操作による文字入力を行うための、脳波のデコーディング手法を確立することを目的とした。
方法:手の伸展・手の掌握・腕の伸展・腕の屈曲の4種の運動企図中および安静時の頭蓋内脳波を取得した。脳波はノイズ除去など前処理を施し、71電極における1秒分のデータを、時系列データとしてモデルへ入力した。自立的にフリック操作を行うには、各時刻のデータに対して、フリック操作の意思の有無の推定と、フリック操作の方向の推定の2つを行う必要がある。そこで、フリック操作の意思の有無を分類するモデルを Long Short Term Memory (LSTM) 層により、 フリック操作の4方向を推定するモデルを全結合層により、それぞれ深層学習を行い作成し、これら2つのモデルを用いてカーソル操作行った。
結果:モデルは それぞれ96.6±0.5%および 67.1±2.7%の精度が得られた。これにより、患者自身が自立的にシステム操作を行えるようになった。
結論:LSTM層による操作意思の有無の推定および全結合層によるフリック操作の方向推定を行うことで、患者が日常生活で自立して脳波による文字入力を行うことが可能なコミュニケーションシステムを確立できた。
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元田 凌平, 御手洗 彰, 上田 順宏, 今井 裕一郎, 中尾 恵
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
385-387
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
人間の理解を超えた複雑さを有する機械学習モデルの医療応用が進められる中,その解釈可能性の向上が課題となっている.従来より画像に対して用いられてきた顕著性マップは識別結果と相関の高い領域を可視化できるが,因果の存在や方向を扱うことはできない.統計的因果探索の分野では特徴量間の因果関係を抽出し,因果グラフとして可視化する試みがなされているが,画像を対象に解釈可能な因果を抽出する方法は知られていない.
本研究では下顎骨再建計画における意思決定プロセスに内在する因果の可視化を目指した深層因果探索モデルを提案する.下顎骨再建術では,三次元CT画像の投影像を用いたシミュレーションを通して移植する腓骨片の数と配置が計画される.本モデルでは,画像を分割して得たパッチ間の因果関係を提案モデルによって抽出し,因果グラフとして可視化する.損失関数に因果行列に対するL1正則化を導入し,座標情報を各パッチの特徴ベクトルに結合することで,画像データに内在する因果を人間が解釈可能な形で可視化する.
提案手法の有効性を確認するため,29例の下顎骨再建計画データベースに対して提案モデルを適用し,因果の可視化を試みた.提案モデルにより,空間的に関連する領域間にスパースかつ解釈可能な因果グラフが生成され,患者個人の下顎骨の画像特徴と医師による手術計画の間に見られる因果関係が可視化されることを確認した.
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小林 真実, 木戸口 勇気, 小木曾 聡, 西野 裕人, 中尾 恵
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
388-390
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
外科手術において、血管や腫瘍などの臓器内部の3次元構造を把握することは治療精度の向上に必要不可欠である。2次元の手術映像に対し、術前に取得された 3D-CT の3次元像を正確に位置合わせできれば、術中ガイドとしての利用が可能となる。深層学習に基づく2D/3D位置合わせの研究が知られているが、手術時の臓器の大規模な学習データベースを得ることは難しく、十分な位置合わせ精度を得ることは困難であった。
本研究の目的は、3次元メッシュの投影像を活用した拡散オフライン学習モデルにより、腹腔鏡カメラ画像に対する肝臓メッシュの形状位置合わせを達成することである。本枠組みでは、学習時に使用する人工データと、予測時に使用する実データに共通する情報として、臓器領域ラベルを用いる。臓器領域ラベルは肝臓の左葉と右葉を表現するマルチラベルとし、位置合わせ後の位置・姿勢に対して繰り返しノイズを加えることで変化する臓器領域ラベルから、加えられたノイズを予測するようにモデルを学習する。
提案モデルによる位置合わせ性能を確認するため、21例400シーンの腹腔鏡画像に対して肝臓メッシュを手動で位置合わせしたデータベースを用いてオフライン学習を実施し、学習済みモデルを5例80シーンの腹腔鏡画像に適用した。実験の結果、姿勢・位置を直接予測する従来の学習モデルと比較して、位置合わせ精度が向上することを確認した。
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佐藤 諒, 花木 勇真, 志賀 研仁, 相澤 巡, 吉澤 誠, 杉田 典大
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
391-392
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
近年,寒冷刺激や急激な姿勢変化など,血圧の急激な上昇や降下が循環器系の疾患を引き起こすヒートショックの件数が増加している.そのため,簡便かつ連続での血圧モニタリングを可能とする,カフレス血圧推定技術に注目が集まっている.
カフレス血圧推定では,光電容積脈波(PPG)を用いた手法が多く提案されてきているが,近年では,映像から得たPPGである遠隔脈波(rPPG)を用いた手法も提案されている.
rPPGを用いた手法では,信号に含まれるノイズや,生体特性の個人差の影響の大きさが課題となっており,現時点で実用化に至るような手法は確立されていない.
そこで本研究では,血圧の絶対値ではなく血圧の時間的な変動値を推定対象とすることで,信号に含まれるノイズの影響の抑制を試みた.さらに,rPPG波形から抽出される時系列の動的特徴量に加えて,被験者に固有の静的特徴量(基準血圧値,安静時における特徴量の代表値など)を組み合わせたハイブリッド校正を採用することで,生体特性の個人差の補正を目指した.
精度検証として,14名の健康な若年成人を対象に,冷水負荷による血圧誘導実験を行った.結果として,ランダムフォレスト(RF)回帰モデルによる血圧変動推定精度が,平均絶対誤差(MAE)5.16 mmHg,相関係数0.76を達成し,接触型であるPPGを用いた従来法に近い性能を示した.
また, rPPG波形形状における特徴量重要度をShapley加法説明値によって評価した.
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平野 紗名, 平手 裕市, 川畑 駿太郎, 中井 浩司, 安藤 寛将
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
393-395
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
【背景】動脈ラインを確保する際に実施されるアレンテストは、橈骨動脈と尺骨動脈の手指領域への血流分布を確認するために、手掌の色調変化を目視で評価し、赤みが戻る時間を測定し、橈骨動脈の依存度を判定する検査である。簡便であるが、主観による目視評価であるため、判定に不確実性が生じる危険性がある。本研究では、カラリメーターを用いて定量的に皮膚色を評価し、アレンテストにおける客観性の向上を図ることを目的とした。
【方法】2024年12月に同意を得た20~24歳の健常者31名を対象とした。橈骨動脈および尺骨動脈を圧迫し、30秒間で15回掌握運動を行った後、脈波消失を確認し尺骨動脈の圧迫を解除し、皮膚色変化をカラリメーターでRGB値を測定し、同時に手背に装着したINVOSで組織酸素飽和度(rSOsub2/sub)を記録した。検討項目はRGB値、純赤色からのユークリッド距離より算出した赤差(相対的赤色度)、およびrSOsub2/subとした。
【結果】圧迫時にR値とrSOsub2/subの低下が、尺骨動脈圧迫解除時にG値とB値の低下およびrSOsub2/subの上昇が観察された。目視による赤みの回復は、相対的赤色度の増加として捉えられた。また従来の目視によるアレンテストでは色変化が不明瞭な症例でも同様の変化を確認できた。
【結論】カラリメータを用いてRGB値を測定することで、アレンテストにおける手掌の色調変化を定量的に評価することができた。
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根津 綾杜, 齋藤 優衣, 片岡 怜, 渡邉 宣夫, 迫田 大輔
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
396-398
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
【本研究のインパクト】
本研究で開発した技術は、小児用補助人工心臓EXCOR(https://www.berlinheart.de/en/medical-professionals/excorr-pediatric/)における血液ポンプ内の血栓形成レベルを、安価な可視光やカメラのみで、奥行き情報を含めた3次元的な評価が可能である。ドナー不足である我が国では、心臓移植の待機期間は非常に長期間であるため、本技術の臨床ニーズは高い。
【独創性】
1.EXCORが拍動式であることに着目し、収縮/拡張期の血流変動に伴う血液の光学特性変化を利用して、ノイズに強く高精度な血栓検出を可能にした。
2.生体組織光学理論を用いて血液内光侵達深さを計算し、EXCOR光イメージング結果と整合させ、イメージング奥行き方向の血栓厚さまで推定可能にした。
【萌芽性】
上記について、in vitro におけるブタ血液を用いたEXCOR血栓試験によって示すことができた。EXCOR拍動流撮影に必要なフレームレートを検討し、100 fpsで血栓イメージングが可能であることが示唆された。血栓は必ずポンプ壁面から形成される。当然であるが、血栓域は血液は流れていない。できた血栓の奥に血流がある。すなわち、血栓越しに拍動血流をカメラで撮影することになる。血栓で光が散乱される分、観測される血栓奥の拍動血流の光学的変化が減衰する。この減衰度は「拍動血流の光侵達深さ」と相関し、血栓の厚みがあるほど光侵達深さが減少するため、血栓厚みと光侵達深さの関係を示す理論モデルを構築することで、通常の2次元画像から血栓厚さまで推定可能であることが示唆された。 以上の結果より、本技術は実臨床に応用できると考えられた。
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吉澤 誠, 杉田 典大, 酒井 正夫, 則竹 克哉, 伊藤 貴士
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
399-401
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
ビデオカメラの身体映像から得られる映像脈波は,遠隔・非接触的に生体情報を取得できる.特に,身体の異なる箇所における映像脈波の位相差は,脈波伝搬速度と関係し,血圧を推定する情報として有用である.しかし,接触式センサと比較して,映像脈波は照明変動や体動による雑音が混入しやすく,これが位相差の推定精度に強く影響を与える.そこで本研究では,位相差を得るためのいくつかの方法の推定精度を互いに比較・検討した.
まず,顔検出またはHSV成分制限によって解析対象を肌領域だけに限定し,その領域での異なる2箇所の色差映像の平均値時系列として2つの映像脈波を求める.次にこれらに対し,①脈波の谷前後の近似2直線の交点時刻の時間差,②差分面積,③リサージュ図形の多角形面積,④リサージュ図形の楕円近似面積,⑤フーリエ変換の位相差の周波数傾斜,⑥ヒルベルト変換を使った内積法,の6つの方法を適用した.
シミュレーションでは,位相差のある2つの正弦波に対して人為的な雑音を加えたものに対して,上記の方法を適用した.実験では,640×480画素・30fpsのWebカメラで撮影した健常被験者の顔面映像(150×200画素程度)に対して,上記の方法を適用した.その結果,拍毎の情報に依存する①~④より,複数の拍にわたる情報を使用する⑤・⑥が優れており,さらに,⑤よりも周波数変化に対する変動や位相の多義性の影響を受けにくい⑥が優れていることが明らかになった.
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澤田 知宏, 島田 尊正
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
402-404
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
厚生労働省のホームページにおいて、近年ストレス関連疾患の患者数が増加しており、その対策には、日常生活においてストレスを軽減する、予防医学の考えが重要であることが示されている。また、先行研究において1/fゆらぎ特性を持つ音や光にストレス軽減効果があることが報告されている。
そこで本研究では、心拍のゆらぎから得られるLF/HFを用いてストレスレベルをモニターし、ストレスが高まったタイミングで自動的に1/fゆらぎ特性を持つ音刺激(ピンクノイズ)を与えることで、ストレスを軽減する予防医学のためのフィードバックシステムの実現を目指している。しかし一般的にフィードバックシステムでは適切にフィードバックを行わなければシステムが不安定になる。本研究ではストレスを把握するためのLF/HFの適切な測定時間を明らかにするための実験を行った。最初に、被験者にストレス負荷を10分間与えた後、ピンクノイズを聴取させた。その結果、LF/HFの測定値には反映しないことが分かった。一般にLF/HFでは長時間のストレス状態を反映すると言われている。そこで次に、ストレス負荷を1時間実施して測定を行った。その結果20分間のストレス負荷からLF/HFの増減が検出でき、他のストレス計測法である唾液アミラーゼ活性値の増減とも一致することが確認できた。
今後は20分間を単位時間としてストレス軽減システムの実現を目指す。
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Maxim Ryzhii, Elena Ryzhii
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
405-407
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
Transmitting signals from the atria to the ventricles, the atrioventricular (AV) node synchronizes atrial and ventricular contractions by providing conduction delay and protects the ventricles from atrial arrhythmias. The AV node is still a “black box,” and its experimental study is rather difficult. We present a compact multifunctional computer model of the rabbit AV node based on the Aliev-Panfilov cardiac cell model. The AV model includes a dual pathway structure, closely reproduces experimentally obtained anterograde and retrograde conduction curves, and allows the visualization of fast and slow pathway conduction through ladder diagrams. Moreover, the model incorporates the effect of the autonomic nervous system. The combined effect of sympathetic and parasympathetic tones on AV nodal conduction manifests in changes in atrial-His bundle conduction time and regular sinus rhythm, the onset and spontaneous termination of AV nodal reentrant tachycardia, and changes in filtering function in atrial fibrillation.
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福田 有紀子, 川田 徹, 片岡 泰之, Jon Peterson, 朔 啓太, Joe Alexander, 砂川 賢二
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
408-410
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
The kidneys play a fundamental role in the cardiovascular system to regulate blood pressure by maintaining body fluid and electrolyte balance. Renal function is strongly associated with cardiovascular disease, such as heart failure and hypertension. The aim of this study was to develop a comprehensive cardiovascular model capable of describing the effects of angiotensin II (ANGII) and its type 1 receptor blocker telmisartan (TELM) on renal hemodynamics. We employed a lumped parameter model to simulate systemic and renal hemodynamics, where the resistances were influenced by ANGII and TELM. Additionally, we adopted a variable resistance for the renal afferent arteriole, allowing it to respond to pressure variations. This effectively simulated the autoregulatory function that maintains renal blood flow and glomerular pressure relatively constant against changes in systemic arterial pressure. After parameter adjustments, the model successfully reproduced renal blood flow waveforms. Furthermore, the effects of ANGII and TELM on renal blood flow and urine excretion were simulated with reasonable accuracy.
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鴻巣 太陽, 福井 智宏
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
411-412
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
動脈硬化症は多くの心血管系疾患を引き起こすと考えられており,自覚症状に乏しい特徴を持つため,簡便かつ非侵襲的に測定可能な脈波を活用した早期診断手法が期待されている.しかしながら,臨床では主に脈波の伝播する速度に注力した動脈硬化症のリスク評価にとどまっており,動脈硬化の位置や肥厚度を詳細に把握するには,脈波の反射特性など脈波の伝播する現象を全体的に理解する必要がある.本研究では,脈波伝播現象を調査するため,血管モデルの流体構造連成解析を行った.始めに,計算モデルの妥当性を検証するために,3次元直円管モデルを順流方向に伝播する単一脈波を再現し,脈波伝播速度の理論式であるMoens-Korteweg方程式と比較した.脈波伝播速度は,血管壁厚に対する血管内半径の比が0.1を超えるとMoens-Korteweg方程式の値よりも減少し,大動脈では約5%低い値をとった.次に,脈波反射に関する基礎調査として壁厚内半径比を一部変化させた3次元狭窄モデルを用意し,単一脈波の反射を再現した.その結果,単一脈波が狭窄部において反射波へと分離し,逆流方向へと伝播する様子を確認した.本報告では,壁厚内半径比は脈波の伝播に影響を与えることが確認されたため,壁厚や内半径の増減に伴う反射波の定量的な変化について加えて発表を行う.また今後は,分岐や曲がり形状における複数脈波の連成解析について取り組む予定である.
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坂口 優斗, 高 鑫池, 棚田 永遠, 鶴岡 典子, 劉 温鋭, 丸山 央峰, 藤城 光弘, 辻 陽介, 新井 史人, 山口 健, 西 駿明 ...
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
413-415
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
軟性内視鏡手技の安全性の向上,手技難易度の簡便化および手技時間の短縮などを可能とする腸内デバイス群と,これらを腸内に留置・固定する空気駆動型螺旋形状足場を開発している.内視鏡とは別の視野を提供する観察デバイス,処置を支援する牽引デバイスなどが足場に固定されており,これらを腸内に留置する.観察デバイスはCMOSイメージャーとLEDにより構成され,牽引デバイスはマイクロモーターと牽引ワイヤーなどで構成される.足場は空気で膨張する「バルーン部」,配線を有する「フレキシブル基板(FPC)部」,外部装置と接続する「接続部」などで構成され, FPCと螺旋形状に形状記憶処理した超弾性合金ワイヤーをポリイミドフィルムで挟むことで作製される.小さく巻いた足場を内視鏡のオーバーチューブを介し腸内の目的部位へ搬送後,足場展開の際に超弾性合金ワイヤーにより足場の螺旋形状の形成が補助され,バルーンの膨張により腸内壁に押し付けられ固定される.腸の内腔形状を考慮した足場の設計および腸内における適切な展開と位置合わせなどの妥当性を検証するためハイドロゲル製の大腸モデルを用いた評価実験を行った.大腸壁との間の摩擦力を高め,牽引動作に対して姿勢を維持するため足場の外側にメッシュシートを装着する.メッシュシートとして医療用ガーゼを用いたものとポリエチレン樹脂製メッシュシートを用いた2種類について試作評価を行った.
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Seiya Hayashi, 高松 利尋, 小林 雅邦, 炭山 和毅, 二口 俊樹, 下島 直樹, 竹村 裕
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
416-417
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
ヒルシュスプルング病は、消化管壁深部の神経叢の欠如に伴い機能障害を引きおこす病気である。それゆえ、神経叢が疎な病変部を切除することが根治術となり、正確な切除範囲の判定が重要となる。
既存手法の迅速病理診断は、検査時間が一回30分以上かかるが,1回の組織採取で診断がつかないケースがあり,切除ラインの確定に3時間かかる場合もある。そのため、深さ200μm程度に分布する神経叢をリアルタイムで診断する手法が求められている。
これまでに共焦点顕微鏡、多光子励起顕微光など、数々のイメージング手法が提案され、神経叢の可視化が検討されている。しかし、共焦点はでは蛍光物質の生体内投与が認可されておらず、また厚み200μm以上の深い観察が難しい。一方で,多光子励起はレーザー照射による組織損傷など生体への毒性が問題となっている。
そこで、我々は、近赤外ハイパースペクトラルイメージング(NIR-HSI)に着目をした。近赤外光(特に1000~1400nm)は高い生体透過性を持つ。また、近赤外領域は分子振動由来の光吸収をもとに、成分分析が可能となる。これらの特徴から組織深部の神経叢の可視化が可能ではないかと考えた。そこで,この原理を実装したNIR-HSI顕微鏡を開発し,神経叢がGFP蛍光するマウスの腸管を用いて実験を行った。その結果,蛍光画像と比較し、近赤外画像でも網目構造に近い同様の分布が確認できた。また神経叢とその他の領域で、異なる近赤外スペクトルが取得できた。
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濱田 啓介, 齊藤 大祐, 平川 英司, 内山 彰, 工藤 寛樹, 永田 康浩
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
418-420
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
[背景] 未熟児の適切な体温管理は、生存率向上に直結する重要な課題である。新生児集中治療室では高精度な体温測定が求められるが、接触式体温プローブには皮膚損傷や測定精度低下のリスクが伴うため、非接触かつ安全な測定方法の確立が急務である。我々は新生児体温管理の新たな手段として赤外線サーモグラフィカメラ(Infrared Thermography, IRT)を提案し、その測定精度に影響を与える要因を検討してきた。しかし、閉鎖式保育器内でのIRTと測定対象物との角度および距離が測定精度に及ぼす影響に関する報告はこれまでにない。
[目的] 閉鎖式保育器内におけるIRTと測定対象物の角度および距離が測定精度に及ぼす影響を調査する。
[方法] 新生児を模擬する測定対象物として黒体炉を保育器内に設置し、角度(10°、20°、30°)および距離(135mm、185mm、235mm)を変動させ、それぞれの条件下で表面温度を測定した。各条件において、12秒間隔でデータをサンプリングし、600秒間のデータから計50データを抽出して統計解析を行った。一元配置分散分析(ANOVA)を用い、有意差の有無を評価した。
[結果] 角度および距離の変動に対していずれも統計学的有意差が認められた(角度: F(2, 147)=9.43, p<0.05、距離: F(2, 147)=33.28, p<0.05)。
平均温度(角度):10°: 36.90±0.04℃、20°: 36.92±0.02℃、30°: 36.93±0.04℃
平均温度(距離):135mm: 36.95±0.05℃、185mm: 36.93±0.02℃、235mm: 36.89±0.02℃
[結語] IRTと測定対象物との角度および距離の変動に統計学的有意差が認められたが、平均値の差は臨床的に許容できる範囲に留まるため、実用上の影響は限定的であると考えられる。
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瀬能 帆翔, 三村 剣司, 根武谷 吾, 吉田 和弘, 酒井 利奈, 氏平 政伸
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
421-423
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
近年の再生医療の発展に伴い細胞・組織・シート工学材料の移植が増加傾向にあり,凍結保存に耐えられないものは0~4℃の冷温で保存されている.移植に際し細胞生存率を評価する必要があるが,保存可能期間が短いため時間的にきめ細かな管理が必要となる.
我々は,低侵襲かつ即時的に細胞生存率評価が可能な手段として電気インピーダンス計測に着目したが,その値は,細胞の配置や密度,保存液の組成,保存温度の影響を受ける.そこで電気インピーダンス計測による細胞生存率推定における普遍性確保のため,2周波数の比率と規格化補正を導入し検討してきた.結果として,実細胞生存率に対する誤差が軽減されたが,低細胞生存率で誤差が拡大することが新たな問題点として浮上した.誤差低減のためには,保存時間に対する細胞生存率の規格化補正による推定値と実測値の傾向が同様になる必要がある.
本研究では,組成と保存効果の異なる3種類の保存液を用い,単層培養ラット心臓横紋筋細胞を4℃で3~72時間保存した際の電気インピーダンスと実測細胞生存率を測定し,規格化補正による推定値と実測値の時間的傾向をつき合わせることで,低生存率における誤差要因について検討した.
その結果,全ての保存液において冷温保存後12時間までの高生存率では推定値と実測値の傾向が合っていたが,それ以降の低生存率では異なった.この要因は電気インピーダンス値の増加に伴うものであった.
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山岸 礼旺, 中村 真人, 岩永 進太郎, 黒岡 武俊, 北村 寛
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
424-426
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
近年の深刻な臓器不足を背景に、我々は灌流培養技術と腎臓再生療法を融合し、腎臓を再生する体外腎臓灌流培養システムの開発に取り組んでいる。体外で臓器灌流ができれば、従来使えなかった臓器を修復して使うことや、患者自身の不全臓器を再生させるこれまでできなかった革新的な臓器再生技術が生まれ、新しい医療が発展することが期待できる。
これまでブタ腎臓を用いて体外腎臓灌流培養の実験を施行してきたが、培養液の灌流だけでは酸素が不足し、1日以上維持できないという大きな壁に直面している。生体では血中酸素運搬量全体の約98.5%が赤血球の運搬によることから、その役割を担う人工酸素運搬体が大量に必要である。そこで、これまでに赤血球サイズの微粒子を作製可能なインクジェットドライ法を開発してきた。
本研究では、大量生産のために600ノズルを有したマルチノズルインクジェットシステムと微粒子を回収するための空気清浄機を導入し、アルギン酸ナトリウム微粒子の適切なサイズを作製する条件を検討した。
アルギン酸ナトリウム濃度0.3%, 0.5%, 0.8%, 1.0%の4条件それぞれで乾燥微粒子の作製実験を行い、塩化カルシウムを加えることでゲル状のアルギン酸ナトリウム微粒子とし、デジタル顕微鏡での観察画像をもとに微粒子の大きさを画像解析した。その結果、アルギン酸ナトリウム濃度が大きいほど、微粒子の平均直径も大きくなる傾向が分かり、濃度1.0%では4.8μmの微粒子が得られている。
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三村 剣司, 長田 一輝, 吉田 和弘, 酒井 利奈, 氏平 政伸
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
427-429
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
移植医療や再生医療では,半永久的保存法である凍結保存に適さないすべての臓器,多くの組織,一部の細胞では0~4℃で冷温保存されているが,保存可能期間が短いことが欠点である.冷温保存には保存対象毎に適した保存液が用いられ,それらには固体や液体の様々な保護物質が添加されているが,効果が完全とは言えない.保存可能期間を延ばす新たな手法があれば有益である.
我々は,細胞に無害で保存後に除去不要であり,希ガスの1つであるアルゴンガス加圧溶解の可能性に着目した.アルゴンには抗炎症作用や抗アポトーシス作用の報告があるため冷温保存中の細胞保護に有効に働くと考えた.本研究ではラット心臓横紋筋細胞を用い,2~6℃の保存温度でアルゴンガスを0~1.0MPaで加圧溶解し,2~6℃で24時間冷温保存した際の各保存温度における細胞保護効果の圧力依存性について検討した.
培養皿に24h培養された単層細胞を培養液(保護物質を含まない保存液)中でアルゴンガス加圧溶解による冷温保存における保護効果について調べた.その結果,2℃における相対細胞生存率は加圧圧力による差は無かった.4~6℃では加圧圧力が高くなるにつれて相対細胞生存率は高くなり,0.8MPa以上では飽和するか減少する傾向となり,5℃では0.8~1.0MPaで差は見られなかった.
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安部 武志, 浅井 義之, 安達 貴弘
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
430-432
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
免疫疾患に伴うシグナル伝達の調節異常を早期に検出するために、白血球の細胞質内カルシウムイオン(Ca2+)濃度に反映される細胞間相互作用の特徴を定量的に解析する方法が求められている。しかし、正常な免疫系と比べて疾患・未病状態でのCa2+シグナルの振舞いがどのように異なるのかを客観的に評価できる示強性を持つ指標はまだ知られていない。そこで我々は、Ca2+シグナル時系列間の非線形な依存性を表す情報量による高次グラフシグナル解析手法を提案する。この提案手法は、polyspectrum等を用いた従来の高次周波数解析における時系列変数の個数に応じた推定関数の計算コストの増大という課題を解決する。我々はその応用として、進行性の自己免疫疾患モデルであるFas遺伝子に変異を持つlpr/lprマウスから、生体環境下で多数の白血球の細胞質内Ca2+濃度を同時に実時間計測したイメージングデータを得ることで、月齢ごとのCa2+シグナル動態の個体内変動を定量・比較した。本演題発表では、その結果から考察される未病状態でのCa2+シグナル時系列の特徴と、その特徴の背後にあるシグナル伝達経路に関する仮説について報告する。
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中村 昌人, 池田 あゆみ, 中野 裕章, 岸本 直道, 田中 雄次郎, 木村 有希, 中川 慶, 近藤 史隆, 田島 卓郎
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
433-435
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
近年,間歇スキャン式持続血糖モニタ(intermittently scanned continuous glucose monitoring: isCGM)の普及に伴い,間質液中グルコース値のトレンドを用いた糖尿病治療や食事管理が行われている.isCGMはセンサの体内への留置が必要とする医療機器であり,使用者の負担や医療廃棄物が発生するという観点から,穿刺を伴わない非侵襲なセンシング手法の研究されている.本稿ではマイクロ波を用いた手法に着目し,本手法を実現する反射測定用のフロントエンドを集積したワンチップベクトルネットワークアナライザ(vector network analyzer: VNA)を用いた非侵襲グルコースセンサの原理検証機を作製し,糖負荷試験時におけるセンサ信号の時間応答をisCGMと比較することでトレンドの可視化について検証したので報告する.
検証の参加者は20名であり,isCGMを3日以上装着後,同側前腕腹側に非侵襲センサを装着し,座位安静下で測定を実施した.測定生データに一定値以上の変化の生じていなかった20例中10例のデータに対してisCGMによる信号変化を追随する信号が得られた.10名分の信号に対しisCGMの空腹時,ピーク時の値の2点を用いて校正を行った際のisCGMに対する平均絶対的相対的差異は16%であり,非侵襲的なグルコーストレンドの可視化を示唆する結果が得られた.追随の確認できなかった例が生じた要因は体動等によるセンサと皮膚との接触状態の変化によりグルコースによる変化を上回る信号変動が生じたためであると考えられ,今後は詳細な要因分析と測定のロバスト性の向上をめざす.
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隋 伯涵, 藤本 浩司, 那須 克宏, 中口 俊哉, 家永 直人, 黒田 嘉宏
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
436-438
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
乳がんの手術において、患者は仰臥位(仰向け)の体位で手術に臨む。一方、術前MRI検査では一般的に伏臥位(うつ伏せ)で撮影が行われる。従って、伏臥位で撮影された乳房画像データを仰臥位に正確に変換する技術が望まれている。乳房が大きく変形する要因の一つに深層脂肪組織が関与しており、これまでに深層脂肪を考慮した乳房形状の変形手法が提案されている。しかし、乳房の深層脂肪領域が一律の厚みで表現されており、乳房サイズに伴う深層脂肪領域の個人差は考慮されていなかった。本研究では、乳房サイズに応じた深層脂肪領域の動的な分割と乳頭との接続による深層脂肪の拘束を表現することを目的とする。一部の乳房MRI画像では、深層脂肪が乳頭方向の引張力を受け、中央が突出していることが確認された。本研究では、この状況を再現するため、深層脂肪領域を従来の平坦な形状から中央が突出している形状に変更し、乳頭と深層脂肪間に新たな拘束力を導入し、拘束力を考慮したモデルを構築した。3名の伏臥位MRIデータに対して、提案手法を適用し、乳房の腫瘍位置の推定誤差に対して対応のあるt検定を有意水準5%で実施した。その結果、統計量はt (2)= 4.40となり、従来手法に比べて統計的に有意に誤差が減少することが確認された。
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浦澤 優希, 井上 淳, 遠藤 丙午郎, 佐野 常世, 堀川 豊
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
439-441
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
少子高齢化の進行とともに,高齢者の労働割合が増加している.これに対し,アシストスーツを用いて労働者の疲労を軽減する選択肢が広がっているが,その定量的評価は力学的な部分にとどまっていることが多い.本研究では,筋電位を用いて疲労度の定量化を行う手法で,アシストスーツの有無による疲労度の比較を行った.
電気工事業の高齢作業者割合は平成12年に3%であったが,令和2年は14%になっている.少子高齢化は進行するため,高齢作業員は今後も増加すると考えられる.人体は高齢化に伴い運動能力が低下するため,作業の負荷・疲労の軽減を目的としたアシスト用具の開発が急務である.
筋電図は医学分野以外にも活用が期待されており,疲労の推定にも役立てられている.筋線維を速筋,中間筋,遅筋に分け,疲労すると速筋の出力が低下し,遅筋の出力が上昇することも明らかになっている.
本研究では,複数動作の補助を目的とするアシスト用具の評価を実施してきた.筆者らはこれまでに,電気工事を模擬した作業を実施した際の表面筋電図を計測・解析を行った.解析には非定常信号の解析に優れるウェーブレット変換を用い,速筋および遅筋のパワー値を算出した.筋単体におけるパワー値増減のみでは,アシストによる出力低下や疲労低減による出力上昇が考えられる.そこで,本研究では複数の筋を総合して評価することで,疲労度の定量化を図った.
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佐野 秀悟, 塚原 彰彦, 宮脇 富士夫
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
442-444
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
本研究は、抜針時の外力を検出することで血液透析中の抜針事故を防止する装置の開発を目的としている。先行研究の臨床実験では留置針にひずみゲージを貼ることで外力を検出した。しかし、ひずみゲージには温度が変化すると見かけのひずみが出力されてしまうドリフト現象という欠点がある。そこで本研究では、ドリフト現象の影響を小さくするために単位時間あたりのひずみの変化割合であるひずみ速度を導入した。
人間の体温を想定し、36度に設定したホットプレートにひずみゲージをセットし、14400秒間出力を観察した。ひずみ速度は0.2 秒間の微分であるため平均的に0 µST/sを維持し、ドリフトによる影響が軽減された。
実際の臨床で使用されるチューブの太さに近いシリンジを腕にテープで固定し、その上にひずみゲージを貼付し模擬的評価実験を行った。被験者(成人男性3名、平均年齢23歳)に6種類の行為(腕の屈曲と伸展、腕の内旋と外旋、腕の回内と回外、腕以外の体動、センサに触る、センサを外す)をしてもらい、波形の変動を確認した。被験者1名のひずみ速度の平均値と標準偏差は、腕の屈曲と伸展時は、3.66±91.46 µST/s であり、より危険度の高い行為であるセンサを外した時は、107.18±2315.45 µST/s であった。したがって、ひずみ速度の値によって危険度の高い行為を行っているか推定できる可能性が示唆された。
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賈 一鳴, Essam Rashed
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
445-447
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
Pneumothorax is a medical condition characterized by the accumulation of air or gas in the pleural space, causing the lung to collapse. It can occur spontaneously, due to trauma, or because of underlying lung diseases such as chronic obstructive pulmonary disease. Symptoms include sudden chest pain and difficulty breathing, and in severe cases, it can lead to respiratory failure. Early detection and treatment are critical to prevent complications. In this study, we conduct a comparative analysis on different deep learning architectures for pneumothorax diagnosis from chest radiographs. We used CANDID-PTX dataset, which consists of 19,237 cases. These models’ performance is assessed based on metrics like accuracy, precision and recall, demonstrating its potential to aid radiologists in accurate and efficient pneumothorax detection, thereby improving clinical outcomes.
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石田 開
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
448-450
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
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近年、大規模言語モデルの医療分野への応用が進んでいる。中でも、2022年11月にOpen AI社が公開したChatGPTは、幅広い分野の質問に対して、詳細な解答を生成できることから高い注目を集めている。また、ChatGPTは医師や歯科医師、看護師、薬剤師といった、多くの医療系国家資格に合格可能な知識を有するとされている。一方で、ChatGPTの医療工学分野における応用知識や、課題解決能力のベンチマークは、未知数である。本研究では、第26回~第28回の第1種ME技術実力検定試験を対象とし、ChatGPT(GPT-4o)による回答精度を評価した。平均正答率は、基礎知識で68.4±10.5%、応用知識を問う問題では57.9±5.3%、課題解決能力を問う問題では66.7±6.1%となった。また、選択問題では68.4±13.9%、何らかの記述が必要な問題では62.8±7.9%、計算を要する問題では57.8±13.9%、画像を認識し回答する問題で59.7±16.5%であった。論述試験においては、すべての実施回において、所定の文字数でかつ要点を抑えた解答が生成されており、一般的なリテラシーに加え,実務的な知識を有していると考えられた。論述試験を除き、ChatGPTによる得点はおおおよそ170点程度と考えられ、合格基準である得点率6割にはわずかに届かないと考えられる。
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湊 雅弥, 橘 一俊, 大須田 項一, 石榑 康雄, 佐藤 生馬
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
451-453
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
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心臓弁膜症における弁形成術では,執刀医は心臓の術後のリモデリングの形状を予測して弁形成を行うことで心臓は正常な形や機能を取り戻す.この弁の形成やリモデリングの予測は執刀医の暗黙知に依存している.本研究では,弁形成術における暗黙知であった弁の形成やリモデリングの予測を,過去症例の術前・術後の4D CTを統合し,この統合した症例の情報を用いて手術対象の術後形状予測を可能とする手法を提案する.本手法は,はじめに個人の心臓の術前・術後の4D CTから心臓の各組織をセグメンテーションする.これらのうち,術前後で変異の少ない心組織を用いて剛体レジストレーションを行い,同一座標系に統合する.次に,同一座標系に統合するために統合済みの過去症例と手術対象の術前4D CTの変異の少ない心組織を用いて剛体レジストレーションを行う.さらに,これらの画像を用いて術前同士の心臓全体を非剛体レジストレーションで統合する.統合結果から得た心臓の形状情報を用いて,予測対象の術後画像に過去症例を投影する.これにより,心組織を比較し手術を行う患者の術後の形状予測を行う.本手法の結果として,投影した術後画像と投影先の術後画像の左心室内の大動脈弁周辺と心尖の特徴点間の距離は約5mmであった.本研究では,過去症例の統合したものを投影し,新たな症例の術後予測を可能とした.今後は,投影時のアルゴリズムを再検討し予測精度向上を目指す.
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Muhammad Nouman, Ghada Khoriba, Essam Rashed
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
454-456
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
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Medical segmentation models such as MedSAM have shown good zero-shot capabilities on high-contrast modalities such as MRI and CT, yet remain highly sensitive to prompt accuracy. Even minor inaccuracies in bounding boxes or shape annotations can significantly degrade the quality of predicted masks. This limitation poses a major challenge in real-world clinical environments, where time pressure and anatomical complexity frequently lead to imperfect prompts. To address this, we propose a lightweight “MedSAM Guider” module that adaptively refines imprecise prompts without altering MedSAM’s underlying structure. By interpreting and correcting bounding boxes or noisy inputs, the module offers a steadier “guiding hand” for large foundation models such as MedSAM. Preliminary experiments suggest that our guidance approach consistently improves segmentation accuracy for challenging clinical scenarios. Future work will extend this solution to a wider range of modalities and anatomies, further validating its clinical potential for prompt-based medical image segmentation.
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Zhi Wei Tay, Han-joon Kim, John Ho, Malini Olivo
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
457-459
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
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Most in vivo microcircuit-based sensors operate at the low GHz range, which poses challenges for near-field energy transfer from an external source and communication through the dissipative nature of biological tissue. The ideal electromagnetic transmission can be achieved by ultra-low-frequency magnetic fields (1 kHz) that penetrates completely with negligible interaction with tissue. To enhance implementation, we propose to integrate biocompatible, clinically-approved superparamagnetic iron oxide particles into the circuit. Superparamagnetism produces strong magnetic signal at low frequency magnetic fields and is very sensitive to amplitude-changes from the external magnetic source. By connecting a microcoil with SPIOs inside, changes in sensor resistance modulates the total circuit resistance and thus the amount of inductive shielding the microcoil applies on the SPIO (the `felt` amplitude). This reduces the superparamagnetic signal as sensor resistance decreases. Our proof-of-concept work suggests new approaches for the advancement of ultra-low-frequency in vivo microcircuit sensors.
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南出 章幸, 小木 美恵子, 會澤 康治, 藤島 悟志, 南戸 秀仁
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
460-462
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
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近年、医療分野ではデジタルデバイスを活用した先端的な医療機器の開発が急速に進んでおり、生体医用光学分野でも、非侵襲的な光学測定技術が注目されている。この分野では、測定の定量性を保証するための性能評価が不可欠であり、特にヒトや動物などの生体組織と類似した光学特性を持つ光学ファントムの開発が求められている。
従来、生体ファントムの材料として低コストかつ手軽に作製できる寒天が広く使用されてきたが、寒天は弾性や硬さが生体組織と大きく異なるため、精密な機械的特性の再現が困難であり、さらに光学特性の調整が難しいことなども問題として挙げられる。これらの課題を解決するため、本研究では生体内に豊富に存在し、生体組織の主要成分であるコラーゲンに着目し、ヒト皮膚組織を模倣した光学ファントムを開発した。特に、任意の硬さに調整可能なコラーゲンゲルを用いることで、生体皮膚の機械的特性および光学特性により近づけることを目指した。
本報告では、この光学ファントムの具体的な作製プロセス、硬さ調整の方法、ならびに光学特性評価の結果を報告する。
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山野 征靖, 齊藤 浩一
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
463-465
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
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採血の訓練方法には,腕模型を用いる模擬訓練と患者に対する臨床訓練があるが,模擬訓練は穿刺感覚の個人差を体験できないこと,臨床訓練は事故のリスクが問題として挙げられる.そのため穿刺感覚の個人差を再現でき,安全に繰り返し訓練を行うことのできる方法として,ハプティックデバイスを用いたシミュレータの開発が行われてきた.これまでに,血管が浅い位置にある条件下においてヒト同等の反力を呈示することができた.また手ブレ時に生じる,針の軸に垂直な平面方向の反力も呈示することができた.しかしシミュレータには訓練者の視覚再現や手技の評価機能は実装されていなかった.
そこで本研究では,複合現実を用いて手元を見ながら採血手技を疑似的に体験できるシミュレータの開発,および訓練手技の評価機能の実装を目的とする.
シミュレータはPC,ハプティックデバイス,ヘッドマウントディスプレイ(HMD),腕ファントムから構成される.HMDのパススルー機能を使用し,目の前の実環境に反力呈示モデルが組み込まれた仮想空間を合成することにより,手元を見ながら手技に同期した反力呈示が可能であることを確認した.また訓練手技の評価のために,ハプティックデバイスの位置,角度,速度の経時変化を数値的に取得できることを確認した.
今後は取得した手技のデータを用いて評価を行い,訓練者に提示する機能を実装する.また訓練シミュレータとしての性能を総合評価する.
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佐藤 龍晟, 渡邉 高志
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
466-468
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
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歩行分析は運動機能低下や神経疾患の特徴を把握するために主に実施されるが,健常者の健康状態の判断にも有効である。分析の指標のひとつとして健常歩行を基準とした非類似度が利用されており,健常者集団全体もしくは年齢層で分割された集団の平均正規化ストライドが基準として多く用いられる。しかし,これらの集団による基準は歩行の特徴を反映していない可能性も指摘されている。そのため本研究では,年齢層による分割に対して,より歩行の特徴を反映した分割法を検討する。
本報告では,23~86歳の健常成人80名それぞれでストライドの平均加速度・角度波形を求め,被験者間の平均波形の非類似度を動的時間伸縮(DTW)を用いて計算した。その後,非類似度に基づいたクラスタリングを行い,作成したクラスタと歩行パラメータ(ケイデンス・クリアランス・歩行速度等)との相関関係を検証した。
検証の結果,年齢層で分割した場合は歩行パラメータの有意な差が検出されなかったのに対し,本手法で作成したクラスタ間では多くの歩行パラメータで有意な差が検出された。これより,本研究における健常者集団の分割法が歩行の特徴をより反映できていることを確認した。しかし,クラスタ数を大きくしていくとクラスタ内サンプル数およびクラスタ間のパラメータ差が極端に小さくなるケースがあったことから,適切なサンプル数とクラスタ数の関係を検証する必要がある。
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竹俣 一也, 影近 謙治, 南出 章幸
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
469-470
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
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本研究の目的は、脳卒中患者が自主的に上肢麻痺訓練を行えるリハビリテーションプログラムを開発することである.脳卒中後の上肢麻痺などの障害に対してリハビリテーションが重要な役割を果たしている.入院中のリハビリテーションは通常、脳卒中の急性期(発症後数日から数週間)と回復期(その後の数か月)の段階で行われる.本研究はこの期間におけるリハビリテーションを支援するためのコンピュータアプリケーションを開発する.
ここでは患者の指先トレーニングで使用されるペグボードに焦点を当て、そのアプリケーション開発について述べる.理学療法士や作業療法士の指導の下で患者が指先トレーニングを実施する.このトレーニングにはペグボードが使用される.ペグボードを用いたトレーニングでは腕を動かしてペグ穴に刺さっているペグ(ピン)をつまみ、ペグ穴からペグを抜く.次に腕を動かしペグを再度ペグ穴に挿入するといった動作を繰り返す.
本稿では、腕を動かしてペグをつまむという動作までを模倣するために専用の治具を製作した.この治具は、治具上部にある2つの面を親指と人差し指でつまむ構造になっている.治具上部の2つの面を親指と人差し指でつまむ際に、治具内部に仕込まれているトーションバネによる反発力が両指に伝わる.これでペグの親指と人差し指でつまむ指先運動を実現している.ここではそのトーションバネによる適度な反発力について調査した.
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安藤 温規, 渡邉 高志
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
471-473
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
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歩容変化の検出は転倒予防や早期診断において重要である.しかし,歩容変化は複数の歩行評価指標が複合的に変動するため,本研究では,これら指標の歩容変化に対する影響度を推定するモデルの構築を目的とした.
被験者6名に慣性センサ(腰部・両大腿部・両下腿部・両足部)を装着し,基準歩行と歩容変化歩行を計測した.歩容変化は,ストライド時間増加,歩隔増加,足部クリアランス低下,両脚支持期時間増加とし,古典的モデル・アンサンブル型モデル・ニューラルネットワークモデルを含む計11種類の機械学習モデルから,歩容変化に最も影響を与えた歩行評価指標を単一センサごとに推定したが,どのモデルにおいても高い推定精度は得られなかった.これは,歩行条件として設定した指標以外の指標も変化した可能性がある.
そこで,推定精度が比較的高かったフィードフォワードニューラルネットワーク(FFNN),ロジスティック回帰(LR),サポートベクターマシン(SVM)において,各クラスに属する予測確率の信頼度を評価するExpected Calibration Error(ECE)を算出した.その結果,FFNNとLRでは,高い予測確率を伴う誤分類が観察され,ECEも高い傾向にあった.一方,SVMは誤分類時においても特定のクラスに対して極端な確率分布を示さずECEも低かったことから,複合的な歩容変化を適切に捉えられる可能性が示された.
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舩井 直人, 渡邉 高志
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
474-476
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
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フリー
歩行中の体重心位置は,歩行機能を評価する上で重要な指標である.近年,慣性センサを用いた体重心位置推定に関する研究が進められているが,片麻痺などの左右非対称な歩行では,特に左右方向での推定精度に課題がみられた.そこで本研究では,慣性センサから取得した3軸加速度および3軸角速度を入力とする双方向長・短期記憶(Bi-LSTM)ネットワークモデルを用いて,歩行中の体重心位置を推定する方法において,歩行の左右非対称が推定精度に影響するかを検証した.光学式モーションキャプチャと,下肢および体幹に装着した7個の慣性センサを用いて,10名の健常者で,通常歩行,片麻痺模擬歩行,高齢者模擬歩行,障害物横断歩行,低速歩行を計測したデータを用いて,Leave-one-subject-out交差検証により推定精度の評価を行った.前後方向および上下方向の成分については,片麻痺模擬歩行での重心位置推定精度は他の歩行条件と同程度であったが,左右方向成分については先行研究と同様に推定精度の低下がみられた.しかしながら、他の成分に対する左右方向成分の推定精度の低下は,先行研究の結果よりも小さかったので,今後は,左右非対称な動作における重心位置推定精度をさらに多様な歩行で検討する予定である.
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Yuttamol Muangkram, Yukiko Himeno, Akira Amano
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
477-479
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
ジャーナル
フリー
Photoreceptors convert light into electrical signals, requiring substantial energy to maintain ion gradients. Disruptions in energy supply contribute to retinal diseases with limited therapeutic options, and the mechanisms of energy production in photoreceptors remain uncertain. This study developed a mathematical model to explain key components of energy production using formulas based on Michaelis-Menten kinetics, encompassing substrate-product, allosteric, or rapid equilibrium bi-bi kinetics. Simulation results indicate that total ATP production in the dark rises by around 66.1% compared to light conditions. Additionally, the proportion of glycolytic fluxes converting pyruvate to lactate increases from 80% to 84.9%, while the portion directed to acetyl CoA decreases from 20% to 15.1%. Using fatty acids as an energy source with remaining oxygen decreases ATP production by less than 5%. Under pathophysiological conditions, photoreceptors may utilize alternative energy sources that require more oxygen than glucose. Further research is needed to enhance our understanding of energy metabolism.
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内田 知佐, 大塚 翔, 中川 誠司
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
480-482
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
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骨伝導音は,その一部の成分が外耳を介さずに中耳や内耳に直接到達するため,耳栓を装用しても容易に知覚可能である.そのため耳栓装用が不可欠な強大騒音下での音声コミュニケーション・デバイスに応用されてきた.しかしながら,強大騒音下・耳栓装用時の骨伝導音知覚は,騒音特性や耳栓の遮蔽特性,さらには耳栓効果(耳栓装用下の骨伝導音聴取時に低域のラウドネスが増大する現象)によって変化し,その予測は容易ではない.また,先行報告が限定的であるうえ,報告によって各種騒音の効果が異なっている.統一された条件下で,各種騒音の影響をシステマティックに検証する必要があると思われる.本研究では,複数の種類/レベルの騒音下において,耳栓装用時の骨伝導音声の明瞭度を調査した.また,骨伝導音声呈示時の外耳道内音圧を計測することで,骨伝導音の伝搬成分の推定を行うとともに,明瞭度試験の結果の妥当性について検証した.
明瞭度は無音>マルチトーカーノイズ>ピンクノイズ>ホワイトノイズとなった.また,高域に強い成分をもつ破裂音や摩擦音の一部では,マルチトーカーノイズと比較し,ホワイトノイズとピンクノイズにおいて明らかな明瞭度の低下が見られた.外耳道内音圧では,音声スペクトル情報がホワイトノイズ下ではほとんど消失していたのに対し,マルチトーカーノイズでは比較的よく残存しており,明瞭度試験と矛盾しない結果となった.
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伊藤 潤一, 渡邉 高志
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
483-485
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
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機能的電気刺激(FES)は電気刺激によって筋収縮を誘発する技術であり、身体に麻痺を抱える患者の動作補助に用いられる。閉ループFES制御を適用する際には、事前に制御器パラメータを決定する必要があるが、運動時の姿勢変化によって適切なパラメータが変化してしまう。しかし、閉ループFES制御に関する研究の多くでは姿勢変化時のパラメータ調整については議論が進められていない。そこで本報告では、PID制御器を用いた手関節の閉ループFES制御において、前腕姿勢に応じてPID制御器のゲインを変える方法の有効性検証を目的とした。
はじめに、橈側手根伸筋で、ランプ状に変化する強度の電気刺激を与えた際の手関節掌背屈角度を、3通りの前腕傾斜状態と3通りの前腕回旋状態の組み合わせからなる計9姿勢で測定した。測定結果から各姿勢でのゲインを算出し、前腕の傾斜角度と回旋角度からゲインを算出する高次多項式を決定した。
次に、この多項式を用いて、PID制御器のゲインをリアルタイムで変更しながら、前腕の姿勢変化を伴う手関節閉ループFES制御を行なった。目標値との絶対平均誤差(MAE)は、ゲイン固定の場合で9.09deg、ゲイン可変の場合で5.49degとなり、MAEが減少していたことから前腕姿勢変化に応じてゲインを調整する方法の有効性が示唆された。
今後は、他の筋に関してや、より複雑な姿勢変化を伴う条件に関してさらなる検討を行い、姿勢に応じたゲイン自動調整法の開発を進めていく予定である。
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前山 航大, 内山 孝憲
2025 年Annual63 巻Proc 号 p.
486-488
発行日: 2025年
公開日: 2025/10/29
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The relationship between electromyogram (EMG) and contraction force during dynamic movements is nonlinear, making it difficult to model. This study aims to construct a dynamic muscle model using a spring-mass-damper system, assuming that the static contraction force is proportional to the square root of the EMG amplitude.
First, static contraction forces and EMG signals were recorded in the range of 2% to 30% of the maximum voluntary contraction force, and the relationship between the force and EMG was approximated by the square root function. The voluntary contraction experiment was then performed using random target force levels. Two 60 second recordings of EMG and force were extracted, with the first one used for model identification and the second for model validation. Model identification was performed using the proposed Hill-type spring-mass-damper model and the Hammerstein model.
The proposed model provided a lower normalized root mean square error than the Hammerstein model.
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