2025 年 Annual63 巻 Proc 号 p. 442-444
本研究は、抜針時の外力を検出することで血液透析中の抜針事故を防止する装置の開発を目的としている。先行研究の臨床実験では留置針にひずみゲージを貼ることで外力を検出した。しかし、ひずみゲージには温度が変化すると見かけのひずみが出力されてしまうドリフト現象という欠点がある。そこで本研究では、ドリフト現象の影響を小さくするために単位時間あたりのひずみの変化割合であるひずみ速度を導入した。
人間の体温を想定し、36度に設定したホットプレートにひずみゲージをセットし、14400秒間出力を観察した。ひずみ速度は0.2 秒間の微分であるため平均的に0 µST/sを維持し、ドリフトによる影響が軽減された。
実際の臨床で使用されるチューブの太さに近いシリンジを腕にテープで固定し、その上にひずみゲージを貼付し模擬的評価実験を行った。被験者(成人男性3名、平均年齢23歳)に6種類の行為(腕の屈曲と伸展、腕の内旋と外旋、腕の回内と回外、腕以外の体動、センサに触る、センサを外す)をしてもらい、波形の変動を確認した。被験者1名のひずみ速度の平均値と標準偏差は、腕の屈曲と伸展時は、3.66±91.46 µST/s であり、より危険度の高い行為であるセンサを外した時は、107.18±2315.45 µST/s であった。したがって、ひずみ速度の値によって危険度の高い行為を行っているか推定できる可能性が示唆された。