生体医工学
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手関節閉ループFES制御における前腕姿勢に応じたゲイン可変制御法の有効性検証
伊藤 潤一渡邉 高志
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2025 年 Annual63 巻 Proc 号 p. 483-485

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抄録

機能的電気刺激(FES)は電気刺激によって筋収縮を誘発する技術であり、身体に麻痺を抱える患者の動作補助に用いられる。閉ループFES制御を適用する際には、事前に制御器パラメータを決定する必要があるが、運動時の姿勢変化によって適切なパラメータが変化してしまう。しかし、閉ループFES制御に関する研究の多くでは姿勢変化時のパラメータ調整については議論が進められていない。そこで本報告では、PID制御器を用いた手関節の閉ループFES制御において、前腕姿勢に応じてPID制御器のゲインを変える方法の有効性検証を目的とした。

はじめに、橈側手根伸筋で、ランプ状に変化する強度の電気刺激を与えた際の手関節掌背屈角度を、3通りの前腕傾斜状態と3通りの前腕回旋状態の組み合わせからなる計9姿勢で測定した。測定結果から各姿勢でのゲインを算出し、前腕の傾斜角度と回旋角度からゲインを算出する高次多項式を決定した。

次に、この多項式を用いて、PID制御器のゲインをリアルタイムで変更しながら、前腕の姿勢変化を伴う手関節閉ループFES制御を行なった。目標値との絶対平均誤差(MAE)は、ゲイン固定の場合で9.09deg、ゲイン可変の場合で5.49degとなり、MAEが減少していたことから前腕姿勢変化に応じてゲインを調整する方法の有効性が示唆された。

今後は、他の筋に関してや、より複雑な姿勢変化を伴う条件に関してさらなる検討を行い、姿勢に応じたゲイン自動調整法の開発を進めていく予定である。

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© 2025 社団法人日本生体医工学会
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