抄録
近年、化石燃料の大量消費により地球温暖化、酸性雨などの深刻な環境問題を引き起こしていることが知られているとともに、化石燃料の将来的な枯渇が懸念される。また我が国では天然資源が乏しいことから化石燃料に替わるエネルギー資源供給が早急の課題である。我が国が独自で供給できる天然資源としてバイオマスの活用が推進されているが、現実には、利用されずに不要物となってしまうバイオマスが多く存在している。これらの現状を踏まえて「未利用バイオマス」を効率的に利用可能にするエネルギー転換技術が注目されており、その一つに生物学的水素生成技術(水素発効)がある。未利用バイオマスのエネルギー転換技術においては、原料の組成や性状・品質が地域単位で異なり、同質の原料を安定的に供給することは困難である。水素発酵においても、このようなバイオマスの種類・性状・品質の不均一性による水素生成効率への影響が、バイオマスからの水素生産実用化において重要な課題になると考えられる。そこで、本研究では食品・動植物性残渣、畜産糞尿、木質系不要物、および低品質堆肥など、多様なバイオマス系廃棄物に対して水素生成可能な植種微生物の開発に関する検討を行った。