近年、ごみの焼却残渣からの有価物回収、特に貴金属の回収が盛んに検討されている。ストーカ炉においては、落じん灰に高濃度に貴金属が濃縮されていることが知られているが、流動床炉においても貴金属が濃縮されている焼却残渣があると考えられた。流動床式ガス化溶融炉と流動床式焼却炉の流動床を調査した結果、流動床の炉底砂に高濃度に貴金属が濃縮されており、その金濃度は数百～数千mg/kgと非常に高濃度であることが分かった。しかしながら、ボイラ灰、ガス冷灰、集じん灰等のその他の熱処理残渣においては、1mg/kg未満という非常に低い濃度であった。EPMAによる解析の結果、炉底砂に含まれる金は20μm程度の粒子状で存在しており、他の物質と反応していない安定した状態で存在していた。炉底砂は貴金属、特に金の資源価値が高いことから精錬事業者に販売し、金の回収を行うスキームを構築した。
