流通研究
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変容する小売業態
坂田 隆文
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2002 年 5 巻 2 号 p. 63-75

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抄録

本稿は小売業態論の既存研究において想定されているいくつかの前提を再考し、小売業態論の新たな発展可能性を見出すことを目的としている。既存の小売業態論では小売業態を考察する意義、その中心課題となる事柄、小売業態を規定する小売ミックスや商品取扱い技術といったさまざまなテーマを議論してきており・その研究蓄積も多数存在する。しかしながら、それらの研究においては、わが国における荒川 (1962) 、欧米における McNair (1958) といった小売業態論の嚆矢とも言える研究において想定されてきた「小売業態とは小売商における競争過程を分析するための概念である」という前提がほとんど問われることなく発展してきたように思われる。
本稿では、これまでの小売業態論が小売ミックスや商品取扱い技術による小売業の分類としての小売業態によって小売商の競争過程を眺めようとしてきたのに対して、以下の3つの結論を導いている。それは第1に、小売業態とは一旦規定された後にも、いかようにも変容する可能性をもっているという結論である。この結論は次の結論を導くものである。すなわち第2に、小売商の競争過程の中から生じてきた小売商どうしの「差」こそが小売業態に他ならないという結論である。さらに第3に、この「差」を規定する要素には価格や品揃え、販売方式、営業時間、店舗特性、など多岐にわたるものがあるが、何が小売業態間の「差」を規定できるのかは競争を通して事後的に判断されるという結論である。その上で、このように「差」としての小売業態という概念から、今後議論されるべきテーマとして、特定の小売業態に特化した小売業態分析を挙げている。

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