抄録
加速度センサを用いて身体活動に伴うエネルギー消費を推定する試みが多くなされてきた.しかしいずれの方法も平坦路での歩行,走行中のエネルギー消費は推定しうるものの,坂道,階段などの勾配を有した歩行路では正しくエネルギー消費を推定することが出来なかった.本研究では,体重心位置に加速度センサを設置し,勾配のある歩行路でもエネルギー消費が推定できる方法を検討している.本稿では,加速度データから相対的な体重心の移動軌跡を求めることによって歩行路の勾配を推定し,その結果を用いてエネルギー消費を推定することを試みた.その結果,負勾配では平坦歩行時よりも相対軌跡波形が縮み,正勾配では平坦歩行時よりも大きな軌跡を描くなど,相対移動軌跡は勾配に応じて変化することが明かとなった.既に明らかになっている平坦歩行時のエネルギー消費推定式にこの勾配補正を施すことによって,勾配路歩行でのエネルギー消費が推定可能であることが示された.
