Dynamics & Design Conference
Online ISSN : 2424-2993
セッションID: 223
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223 マルチボディシステムの運動の最適化に関する研究 : 浮遊リンク系の場合
岩村 誠人古賀 智久桝谷 祐輔尾崎 弘明
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抄録
リンク機構の動力学計算法については,マルチボディダイナミクス[1,2]やロボティクス[3]の分野で古くから研究が行われており,既に開リンク機構,閉リンク機構,構造変化を伴うリンク機構などの効率的な順,逆動力学計算法が整備されている.それらの成果は現在ADAMSやDADS, OpenHRPなどのソフトウェアの中で利用され,ヒューマノイドロボットのような大自由度系の動力学シミュレーションも手軽に実行できるようになってきている.このようにリンク機構の動力学計算法がほぼ確立された現在,次に求められるのは運動の最適化計算法であろう.例えば,ヒューマノイドロボットでは動力学を考慮してエネルギー消費の少ない運動を生成することが望まれている.これまでにも,マニピュレータや宇宙ロボット,二足歩行ロボットなどの個々のリンク機構の最適制御問題について検討した研究は多く見られるが,それらに共通に適用できる汎用的な最適制御計算法の開発を目指した研究はほとんどない.そこで,本研究では自由度や関節配置の異なる様々なリンク機構に適用できる汎用的な最適制御計算法の確立を目指す.リンクパラメータと動力学パラメータを入力するだけで最適制御計算を手軽に実行できるようなソフトウェアを開発することを最終的な目標とする.著者らは,既報[4]において,固定点を有する開リンク機構に適用できる汎用的な最適制御計算法を提案した.この計算法は,ハミルトンの正準方程式の漸化的な計算法[5]とロバストな最適制御計算法である階層勾配法[6]とを結合したものであり,多自由度マニピュレータの機構解析や軌道生成等への応用が可能である.しかしながら,既報では開リンク機構の一端が空間に対して固定されていることを仮定していたため,宇宙ロボットのように宙に浮いたリンク系には適用できなかった.そこで,本稿では,固定点を持たない浮遊リンク系にも適用できるように計算法を拡張することを考える.まず,ベースの位置・姿勢を表現するためにFig.A1に示すように慣性座標系とベースの原点の間に適切な自由度をもつ仮想リンクを導入する.仮想リンクは質量ゼロであり,関節はすべてアクチュエータを持たない受動関節からなる.これにより,浮遊リンク系を固定点を有する開リンク系と同様に取り扱えるようになる.次に,仮想リンクは受動関節からなり,直動関節が必要になる場合もあることを考慮し,既報[4]で提案した回転関節のみからなるリンク系に対するハミルトンの正準方程式の計算法をそれらの関節が含まれる場合にも適用できるように拡張する.そして,ロバストな最適制御計算法である階層勾配法と結合することによって浮遊リンク系の汎用的な最適制御アルゴリズムを定式化する.提案した計算法をFig.A2に示す3次元宇宙ロボットの最小エネルギー制御問題に適用し,その有効性を確認する.
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© 2006 一般社団法人 日本機械学会
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