Dynamics & Design Conference
Online ISSN : 2424-2993
セッションID: 419
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419 乗客による鉄道車両の車体弾性振動への減衰付与効果
富岡 隆弘瀧上 唯夫鈴木 康文吉田 秀久永井 正夫
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抄録
軽量化が進んだ最近の鉄道車両では車体質量に対する乗客質量の割合が増加している.例えば軽量ステンレス製の通勤形車両ではモータのない中間付随車の場合,車体質量が13〜15トン程度であるので,定員乗車(約160名)の際には乗客の質量は車体質量の70%程度となる.鉄道車両の快適性に対する要求が高まるなかで,振動乗り心地の向上,とくに上下方向の車体弾性振動低減が重要となっているが,車体の設計や振動解析において乗客質量の影響は単純な質量増として扱われることが多かった.これに対し著者らはこれまでに,高速車両の実車体に人と鉄塊を載せて車体を定置加振する試験を行い,人員乗車による影響は単純な質量増とは異なり,車体の減衰能増大の傾向が強いことを明らかにしている.本報告では,車体が単純な「はり」に類似した形状で弾性振動する特性をもつ高速車両とは異なり,車体の屋根と床が独立に変形する傾向が強い通勤形車両を対象に加振試験を行い,人員乗車による車体床面の振動特性の変化を調べるとともに,それを表現する車体弾性振動と乗客の連成振動解析モデルの構築に関する検討を行った.今回得られた結果をまとめると以下のようになる. (1)今回対象とした試験車両の車体は,入力に対する加速度評価点(車体の長手方向中央で左右方向は側寄り腰掛直下の床面)の加速度周波数応答(FRF)は, 8Hzおよび13Hz付近に弾性振動による卓越したピークを持つ.人員乗車により,そのいずれのピークについても周波数の変化は少ないが高さが低下すること(図A1),乗車人数増大に伴ってピーク高さ低下量も大きくなること,乗車時の姿勢によりピーク高さ低下量が異なる場合があることなどがわかった. (2)今回は2名から14名乗車という比較的少人数の乗車条件であったが,車体弾性振動に対する減衰付与効果は大きく,損失係数は空車時に比べて3倍から7倍程度の増大(14名乗車時,振動モードや乗車姿勢により異なる)になることがわかった(図A2). (3)上記の試験結果を表現する解析モデルの構築についても検討した。そして,車体は平板とはりの接続系としてモデル化する簡易解析モデルで表し,乗客一人をばね,粘性減衰の並列系で支持された1質量とするモデルを付与することで,試験結果を良く再現できることを数値計算により示した.
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© 2006 一般社団法人 日本機械学会
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