会議名: 日本機械学会 関西支部第97期定時総会講演会
開催日: 2022/03/16 - 2022/03/17
近年環境問題及びエネルギー問題に対する関心が高まっており,世界各国でCO2排出量の削減やエネルギー効率の向上は課題となっている.課題解決の一つとして,自動車や航空機の軽量化及び環境負荷低減のため,繊維強化樹脂は金属の代替材料として検討されている.その中でも,母材を熱可塑性樹脂とした熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)は耐衝撃性,リサイクル性,補修性などの観点から次世代の材料として盛んに研究がなされている.このCFRTPにおいて,長繊維であるほど高剛性,高強度であるが成形性が低下するというトレードオフの関係が課題とされている.この課題を解決する成形技術の1つとして,プレス成形と射出成形を組み合わせた“ハイブリッド射出成形”と呼ばれる成形技術が注目されている.しかし,2種類の材料を接合しているハイブリッド射出成形品は射出成形における溶融樹脂の溶着のみで接着されており,インサート材と射出樹脂の界面に依存する.従来のインサート材と射出樹脂の界面の接着性に関する研究報告は,主に界面温度が接着性に大きく影響を与えることが明らかにされている1).しかし,樹脂全体の温度の上昇させることは冷却時間の増加,成形サイクルの低下につながる.一方で過去研究において,カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tubse:CNTs)を含有させたフィルムを開発し,界面に添加させることで,約13%の接着強度が向上したことが確認されている2).しかし,CNTsを添加することで界面接着強度が向上したメカニズムが明らかになっていない.そこで本研究では,モードⅡ層間破壊じん性試験(End Notched Flexure: ENF)とショートビーム三点曲げ試験を行い,CNT添加が界面接着性にどのような影響を与えるのか調査した.ENF試験では,CNT含有率0.5wt%で最も破壊じん性が向上し,ショートビーム3点曲げ試験においても,CNT含有率0.5wt%で最も接着性が向上した.これらの試験の結果より,CNTの添加には適量が存在していることが分かった.しかし,今回の試験におけるSEM観察から破断面の違いを観察することができなかった.また,CNT添加が界面接合時にもたらす影響として,示唆走査熱量測定(Different Scanning Calorimetry: DSC),流動解析の結果よりCNT含有率の増加に伴い,接合時の界面温度が低下することが分かった.