機械材料・材料加工技術講演会講演論文集
Online ISSN : 2424-287X
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食品加工プラントの開発と加圧食品の産業化 : 無菌米飯製造プラントの開発例の紹介(技術フォーラム「きらりと光る新潟県のものづくり」)
山崎 彬
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p. 381-385

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抄録

機械技術の開発や研究の動向は、これを利用する業界の要望に沿ったものでなければならない。近年、食品業界での社会的ニーズは、安心、安全、健康を満たすことであり、これを実現するために高圧技術を食品加工に利用する絶好の機会が訪れている。また人類の永遠のテーマとして、環境に配慮した新しい食品加工の形態が模索されており、利便性優先の消費型社会への反省と共に行政の意識も改革されつつある。ここでは、当社の高圧処理米飯の開発を例として、製品開発のスキームがFig.1に示したようなイノベーション・サイクルから生まれることを紹介した。即ち、イノベーションのプラットホーム⇒コンセプトのプラットホーム⇒技術開発のプラットホーム⇒事業化のプラットホーム、の4つの仮想プラットホームを想定し、このプラットホームで行う作業を工程順に紹介した。また、経済的観点から、高効率化と省エネルギーについて論じ、圧力回収方式や原価計算について言及した。この中で高圧処理にかかる総費用が、機械償却費、建物償却費、電力料、修理費、運転管理費の合計で、製品1pack(300ml)あたり日本円で1.25[円/pack]であることを示し、さらに業界のニーズに応えて開発した、「原料を直接高圧処理できるフリーピストンの実用化」で電力料金が1/10に低減され、総コストが0.74[円/pack]になることを示した。将来は更なる大型機の設置によって300mlあたり0.26円(0.1円以下/100ml)となる可能性を示唆した。これは他の食品に高圧処理を適用する場合の参考になると思われる。人類の誕生から300万年の歴史をもつ「火(熱)」に対し、これと並ぶ状態変換因子である「圧力」が、主食の分野で実用化された意義は大きい。これは、新潟県長岡市に集積されたH.P(High-pressure)未来産業創造研究会の功績と共に高圧機械産業の各社のイノベーションに裏付けられて実現したものである。このたび価格に厳しい主食の分野で高圧処理米飯が実現し、さらに国産技術としての無菌米飯禦造システムが韓国に設置され、中国でも複数の導入が計画されていることは、高圧処理が経済的に世界の生活者から支持されたことにほかならない。今後、さらに麺類、パン、惣菜、酒、野菜、果物などの食品から、これら食品中の機能成分を富化させる生化学反応を通じて医食同源が実現され、将来は生体細胞の保存、移植、再生、に関わる医療分野にまで、あらゆる分野で高圧処理が利用され、実用化されることを確信している。

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© 2007 一般社団法人 日本機械学会
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