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オオクロバエは、冬型の気圧配置となる10月下旬に長距離飛翔をし、九州に渡ってくるものがある。その後交尾し、卵巣が発育し世代交代を行なう。長距離飛翔と卵巣発育の生理学的解明のために、実験室内で飼育した韓国釜山産のオオクロバエ(メス)を使用し、飛翔のエネルギー源と考えられる脂質の特性と、卵巣発育に関連するヱクジステロイドの活性について調べた。その結果、羽化10日後よりヱクジステロイド活性が高まり、15日後にピークを形成しその後低下した。15日後は、卵への卵黄蛋白の蓄積が始まる時点であることより、卵の発育との関連が示唆された。また羽化後体重は4倍、脂質含量は6倍に増加した。なお構成脂肪酸の中でパルミトオレイン酸(C16:1)は、約3倍に増加した。この脂肪酸の増加は、同じく冬に世代交代するケブカクロバエと類似していた。