抄録
2002年7月北海道で採集されたハマダラカAnopheles属の蚊は,採集個体および次世代の成虫で形態分類を行い,それらがsinensis,engarensis,lesteriの3種類であると同定したが,乾燥標本や死亡した個体での形態形質の判別は難しい.そこでそれぞれの種のrDNA ITS2領域の塩基配列から分子系統分類を行うことを計画した.An. engarensisについてはKanda and Oguma(1978)によって新種の記載がなされた北海道遠軽地方採集の成虫乾燥標本(聖マ医大所蔵)から同様にDNA抽出を試みた.
これまでのところ,ITS2領域の種特異的な配列から合成されたプライマー(Lee, 2002)を用い,北海道採集群の中からlesteriを選別することが可能になり,PCR産物の大きさからengarensisも区別し得ることが分かった.また,すべての個体から約600bpのPCR産物が得られたので,その塩基配列の解析結果も併せて報告する.