日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第57回日本衛生動物学会大会
セッションID: SY2
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シンポジウム 1-4
高病原性トリインフルエンザ流行にクロバエ類がかかわっていた可能性はあるのか?
*倉橋 弘
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抄録
 2004年1から3月山口,大分,京都のニワトリ,チャボの高病原性トリインフルエンザの流行は畜産業界や消費社会に大きな波紋をよんだ。当初、この流行は渡り鳥による国外からのウイルス侵入によるものらしいと報道された。2月に大分でのチャボの感染が報道される頃になるとクロバエ類に関心のある研究者の間でその生活史の特徴から何らかの形でハエが関与しているかもしれないという話がもちあがった。普通種のオオクロバエとケブカクロバエはいわゆる「冬のハエ」で繁殖期が冬場にセットされており、秋から春にかけて温暖な地方で成虫が活発に摂食・産卵活動し、鶏舎・畜舎にも侵入する。初夏から初秋には高地に標高差移動をし越夏するため低地からは姿を消すが、秋に再び低地に現れる。九州地方ではこの時期にオオクロバエが多数玄界灘の方角から飛来するのが観察され,長距離の”渡り”をするものもあるということから「クロバエもあやしいのでは」ということになった。感染研昆虫医科学部では急遽調査研究の体制がとられ,厚生労働科学研究による「感染症媒介ベクタ_-_の実態,生息防止対策に関する研究」のなかで推進された.クロバエ類の分類生態専門家の立場で当初からこのプロジェクトに参加することができたのでクロバエ類生活史からその関わりを考察してみた。予想された事ではあるが3月に京都府丹波町の現場近くで演者らが採集したオオクロバエとケブカクロバエの2種から高病原性トリインフルエンザウイルスの遺伝子が検出されたのは驚きであった。
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© 2005 日本衛生動物学会
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