抄録
長距離の渡りを行う鳥類によってウエストナイルウイルス(WNV)が持ち込まれる可能性を検討するために,渡り鳥の飛来地を対象として蚊成虫の捕集を行った.成虫の捕獲には誘引源として1kgのドライアイスを用いた吸引式トラップを用いた.得られたサンプルは冷凍して持ち帰り,種類同定の後WNVの検出を行った.調査地と調査時期は以下の通りである:(1)北海道サロベツ湿原(2006年7月上旬),(2)鹿児島県出水市(2006年11月中旬),(3)東京港野鳥公園(2006年6~10月),(4)谷津干潟(2006年8月).サロベツ湿原では9種類,約1,300個体が捕獲された.出水市では,4種類,合計15個体が捕獲された.東京港野鳥公園では,6種類,約1,600個体が採集された.なお,この中には東日本で初めて採集されたイナトミシオカ約120個体が含まれている.谷津干潟では4種類,約360個体が採集された.谷津干潟でもイナトミシオカ2個体が捕獲された.これらのサンプルについてWNVの検出を行ったがすべて陰性であった.