抄録
シャーガス病を媒介する代表的なサシガメRhodnius prolixusの卵寄生蜂Ooencyrtus venatorium の産卵行動過程における呼吸管(卵の長柄部)の出現については,本学会で紹介した.今回,寄生終了後の寄主内部での卵,幼虫の様子を観察した.寄主体液吸収ならびに産卵行動の観察は,実体顕微鏡下で,幼虫の形態は生物顕微鏡下行った.寄生および産卵後の卵の飼育は23~26℃で行った.
呼吸管の出現は産卵行動終了後,必ず卵殻表面に現れる.内部では卵,若齢幼虫がその管にぶら下がる状態で生育を始める.卵はうり状で,長径約0.2mm,短径約0.1mm,長柄部は約0.17mm であった.産卵後,三~四日後の幼虫には呼吸管に繋がる幼虫尾部に三角形状のキャップ(黒色)ができ,その後,幼虫の成長に合わせ脱落する.
なお,卵殻表面から現れる呼吸管の数と羽化個体数との関連についても再度観察したので報告する.