日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第60回日本衛生動物学会大会
セッションID: A11
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矢作川中流域におけるユスリカの終夜採集
*近藤 繁生間野 隆裕小林 貞山本 優
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抄録
2006年7月より2007年5月までのおよそ1年間、矢作川中流域における河畔林内あるいは隣接した場所にて終夜灯火採集をする機会を得た。この調査は河畔林内の生物多様性を調査するのが目的であり、今回ハエ目ユスリカ類について、特に優占種の灯火に飛来する時間帯ならびに飛来数の季節的変化について調査した。採集は河口より50km付近の愛知県豊田市東広瀬地区、西広瀬地区、65~70Km付近の小渡地区、樽俣地区で日没から2時間毎、白布に集まるユスリカ類を吸虫管にて採集した。採集時間はおよそ30分としておもに♂を採集した。今回の調査では、ユスリカ類は厳冬期を含めて通年採集された。その結果、多くの種が日没後3~4時間以内に飛来した。しかし、中にはヒゲユスリカ族のオオヤマヒゲユスリカように深夜2時に最大の飛来数を示す種や、ダンダラヒメユスリカのように夜明け前4時に飛来数のピークを示す種もあった。また、日没後数時間以内と深夜2時から4時にかけて2つのピークを示したハマダラハモンユスリカのような種もみられた。一般に暖かい季節では、成虫の羽化、群飛は日没前後など照度が関連していると思われる報告がある。このため、成虫の灯火への飛来時刻も日没から数時間以内となることが理解できる。しかし、中にはオオヤマヒゲユスリカのように、羽化、群飛時刻と灯火への飛来時刻が全く異なる種もあり、さらに、日没後と深夜2時頃にピークを示した種、夜明け前4時のみにピークを示した種、これらの種に関しては飛来のための要因が必ずしも、羽化や群飛時刻とは一致しないと考えられた。また、寒い季節に羽化する種は一般に昼間に羽化、群飛することが報告されているが、これらの種の飛来時刻についてはほとんど分かっていない。今回、2月にヒゲユスリカ族のナガスネヒゲユスリカの1種の飛来を観察することが出来たが、この種の場合は、気温が飛来に大きく影響している結果を得た。
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© 2008 日本衛生動物学会
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