日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第60回日本衛生動物学会大会
セッションID: A12
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富栄養湖沼深底部における淡水性自由生活線虫類の動態
*平林 公男西川 健一坂井 規浩宮原 裕一花里 孝幸福原 晴夫
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抄録
袋形動物門 線虫綱(Nematoda)に属する線虫類は種数が多く、現在知られているだけでも5000種以上が記載されている(内田、1965)。線虫類の生息場所は多岐にわたり、水域(海水、淡水)や陸域(土壌)はもちろんのこと、植物や動物の生体内で寄生生活をしているものまでいる(内田、1965)。淡水性自由生活線虫類については、湖沼底生動物群集の一つとして古くからその存在は認識されていた(Miyadi, 1931)。しかし、その実態についてはほとんど報告されておらず、不明な点が多い。また、分類体系が未整備であるために、属までの検索も極めて難しいのが現状である(野沢・吉川、1990)。諏訪湖においては田中(1918)が魚介類に寄生するDistomaを記録しているが、これ以降、本湖における線虫類についての報告はほとんど無く、現在に至るまでその動態については全くわかっていない。本研究では、諏訪湖湖底における自由生活線虫類の個体群動態を明らかにすることを目的として、2003年より湖心部において10日に1回の調査を行ってきた。本報告では、2003年からの湖底表層泥中に生息する線虫類の個体数密度の年変動、季節変動を明らかにすることができたので、ここに報告する。線虫類の個体数密度の年変動は2003年から2005年にかけて有意に減少し(p<0.05)、2006年には有意に増加した(p<0.05)。各年における季節変化は2005年の春期を除き、一年を通して有意な季節変動は認められなかった。1980年と現在とで比較してみると、1980年10月には168711~238133匹/m2であったものが、2006年8月では23422匹/m2、2007年10月には32251±16330匹/m2となっており、減少傾向にあることが示唆された。
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© 2008 日本衛生動物学会
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