日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第60回日本衛生動物学会大会
セッションID: B25
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ベトナム全土における古タイヤに発生する蚊類の生態調査(1)ネッタイシマカおよびヒトスジシマカ幼虫の侵襲度調査
*比嘉 由紀子Nguyen Thi Yen川田 均Tran Hai SonNguyen Thuy Hoa高木 正洋
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抄録
ベトナムは、コペポードを用いた蚊幼虫駆除により、媒介蚊の密度を低下させることに成功した国であるが、近年ネッタイシマカとヒトスジシマカの置き換わり現象が報告されている。この2種の分布の現状を把握することは、効率的な媒介蚊防除に極めて重要な情報を与える。また、媒介蚊の分布を特徴づけている環境要因を明らかにすることは、将来起こりうる気候・環境変動にともなう媒介蚊分布や感染症流行予測のために重要である。本研究ではベトナムにおけるネッタイシマカとヒトスジシマカの分布を調べ、それに影響を及ぼす環境要因を明らかにするために、国道沿いに点在する古タイヤに注目して全国調査を行った。2006~2007年に古タイヤから幼虫採集を行った。その結果、ネッタイシマカは南部で多く、北上するに従い割合が低下した。一方、ヒトスジシマカは北部で多く、南下するに従い割合が低下した。同じ緯度で海岸部と山間部で比較した場合、海岸部ではほぼ100%がネッタイシマカであるが、山間部ではヒトスジシマカの割合が増加した。また、一般的に言われている、ネッタイシマカ=都市部、ヒトスジシマカ=農村部という構図は必ずしも当てはまるわけではなく、どちらか一方の蚊種が優勢になっている地域では、その蚊種が都市化の程度に関係なく発生していた。発生源周辺の植生の割合と家屋集積性が2種の発生に関連する環境要因であることが示唆された。
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© 2008 日本衛生動物学会
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