抄録
演者らは、国内各所で捕集したコガタアカイエカからの日本脳炎ウイルス(JEV)の分離と遺伝子解析を2005年より継続して行っている。昨年、千葉県および鹿児島県の豚舎周辺で捕集されたコガタアカイエカのプール検体の中に、ヒトスジシマカ由来培養細胞C6/36に対して、標準的なJEVとは異なる細胞変性効果(CPE)を示すものが複数確認された。そこで、CPE陽性プール検体の培養上清からRNAを抽出し、JEV特異的なリアルタイムRT-PCRや多くのフラビウイルス種を検出できる汎用プライマーを用いたRT-PCRで遺伝子検出を試みたが、結果はすべて陰性であった。しかし、RT-PCRで得られた非特異的増幅産物の塩基配列を解析したところ、この増幅産物の塩基配列は、マイナス鎖のRNAウイルスであるラブドウイルス科ウイルスのL遺伝子の一部に類似性が認められた。この遺伝子情報を手がかりとして隣接領域をPCRで増幅することにより、千葉県および鹿児島県の分離株それぞれについて、これまでに約4,000塩基の配列情報が得られている。これらの遺伝子情報を相互に比較したところ、塩基配列ではいくつか変異が認められたが、推定されるアミノ酸配列はほとんど同一であった。また、今回得られた配列と、既知のラブドウイルスにおいて相当する遺伝子領域の情報をもとに、これらウイルスの類縁関係を推定したところ、本ウイルスは既知のラブドウイルスとは分子系統的に明確に区別され、これまでに報告のない新種のラブドウイルスである可能性が強く示唆された。