日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第61回日本衛生動物学会大会
セッションID: B04
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一般講演
滋賀県における元マラリア浸淫地での媒介蚊調査
*二瓶 直子米島 万有子渡辺 護津田 良夫澤邉 京子大橋 眞中谷 友樹小林 睦生
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抄録
地球規模の温暖化にともなう新興・再興の蚊媒介性疾患の監視を効率よく実施するためには、既存の蚊相の動向を把握する必要がある。北海道を北限とする日本列島弧の過去のマラリア浸淫地のうち、日本のほぼ中央部に位置するいわゆるマラリア5県の中でも最後までマラリア患者が確認されていた滋賀県において、我々は蚊を捕集しハマダラカ属の調査を実施した。 彦根地方ではハマダラカの生息地として葦原等の報告があることから、戦中から現在にいたる地図や空中写真・衛星画像や統計資料を用いて、内湖・干拓地や琵琶湖に流入する河川流域の低湿地で葦の自生地域あるいはその保存地域を抽出した。この中から、初年度は、滋賀県琵琶湖東南部に位置する彦根市・近江八幡市およびその周辺市町内の葦原、水田および牛舎を選び、2008年8月1日から10月11日に、3週間ごとに4回,各回2日間、成虫については葦原では1kgドライアイスを用いたCDCトラップ50箇所(述べ124個)、ライトトラップは3牛舎に設置した。幼虫は内湖、三角州面、河川流域など異なる地形面にある水域で採集した。捕集された蚊はまず形態的特徴で同定し、シナハマダラカ以外のハマダラカ属と分類された個体については遺伝子解析を行った。 その結果、2008年に捕集されたハマダラカ属の成虫総個体数はライトトラップ14,543個体、CDCトラップ399個体、計14,942個体で、優先種のコガタアカイエカに対するハマダラカ捕集比率は3.66-10.01%と1950年代に比較して低かった。形態的特徴でオオツルハマダラカと分類された個体も遺伝子解析の結果は,全てシナハマダラカであった。一方幼虫については、彦根城に近い琵琶湖に注ぐ小河川でチョウセンハマダラカも確認された。しかし過去の報告に比べて種は少なく、今後、過去と現在の内湖、干拓地、水田などの土地利用や農業形態と比較しながら、成虫・幼虫調査を実施して、マラリア媒介蚊の空間解析を試みる予定である。
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© 2009 日本衛生動物学会
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