抄録
滋賀県湖東地区(彦根市、東近江市、安土町、近江八幡市)において、内湖周辺を中心に11地域および1牛舎で蚊成虫の捕集調査を行った。調査は、2008年8月1日から10月12日までの、3週間おきの2晩ずつ、計8夜実施した。蚊の捕集には、河川や葦原、内湖周辺などにドライアイス1kgを誘引源としたCDC型トラップを用いた。得られた成績は昨年(2008年)、本学会で発表した富山県での調査結果と比較し、滋賀県の特色の有無を検討した。
その結果、コガタアカイエカ、シナハマダラカ、アカイエカ、ヒトスジシマカ、カラツイエカ、オオクロヤブカ、アカツノフサカの7種が捕集された。全捕集数10,538個体のうち82.7%(8,714個体)がコガタアカイエカであった。本調査期間において継続的に捕集した地点で、コガタアカイエカの季節消長をみると、人為的に水の管理がされている水田地域に設置した地点では、捕集数は8月に多く、特に8月下旬にピークがあり9月に激減した。一方、水郷地域など葦原の広がる一部の地点では8月でも捕集されるが、9月中旬にピークが見られ、水田地域と同様10月にはほとんど捕集されなかった。2007年に行った富山県のコガタアカイエカの結果と比較すると、牛舎以外の場所では、富山は0~14 ± 9 / trap-nightであったのに対し、滋賀は0~185 ±321 / trap-nightであった。牛舎内では、富山は249 ± 217 / trap-nightであったが、滋賀は193 ±220個体(別にライトトラップ設置)であった。この結果から、牛舎以外の場所では滋賀が富山に比べ、圧倒的に多くのコガタアカイエカが捕集された。しかし、捕集数にはトラップ設置点による地域(地点)差が認められ、この差異について地形図や空中写真を資料とし、GIS(地理情報システム)を用いて、地点周辺の土地利用や地形などの地理的な特性から検討を行った。