日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第62回日本衛生動物学会大会
セッションID: A13
会議情報

野外の低温条件下におけるアカイエカとチカイエカの吸血活動
*大橋 和典津田 良夫葛西 真治川田 均阿部 眞由美都野 展子高木 正洋
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 演者らはこれまで、住宅地におけるウエストナイルウイルスの潜在的媒介蚊としてアカイエカとチカエイカが重要であることを明らかにし、長崎県では、アカイエカが2月下旬~3月上旬に休眠から覚醒して活動を開始すること、チカイエカは冬期でも野外で活動していることを報告した。冬期における媒介蚊の吸血活動は、病原体の伝播や越冬条件を決定する重要な要因になりえるので、野外における吸血活動と気温条件との関係を調査した。
 ニワトリを囮としたトラップを地上1.5mに日没後5時間設置し、2.5時間おきに蚊を回収した。トラップの設置は降雨や風のない日を選び、2007年2-4月に18回、2007年12月-2008年1月に19回実施した。気温をデータロガーで記録し、2.5時間の平均気温を蚊の飛来時の気温とみなした。採集されたアカイエカとチカイエカは、PCR法および個体飼育後のF1雄成虫の交尾器によって同定した。その結果、アカイエカは7.5℃以上、チカイエカは6.8℃以上で採集され、両種とも10℃を越えると飛来数が増加することが明らかとなった。これら飛来した蚊は低温条件でもトラップ内でニワトリから吸血することができた。そこで、吸血時の気温と吸血量の関係を調べるために、トラップ内で採集された吸血蚊を実験室に持ち帰って産卵させ、吸血量の指標として産卵数を記録した。産卵数は体サイズと有意な相関がみられたが、吸血時の気温には影響を受けていなかった。したがって、アカイエカとチカイエカは気温約7度以上で吸血活動を行い、低温条件下でも吸血量が低下しないことが示された。蚊の活動が活発になる10℃以上では、ウエストナイルウイルスの伝播のリスクが生じると考えられた。

著者関連情報
© 2010 日本衛生動物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top