日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第62回日本衛生動物学会大会
セッションID: B12
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ハツカネズミケモチダニ感染NCマウスで重篤な皮膚炎が認められないケースについて
*及川 陽三郎
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抄録

 NCマウスは、ダニ抗原塗布などのアレルゲンによる皮膚刺激により、ヒトのアトピー性皮膚炎と類似した症状を呈することからこの疾患のモデル動物とされている。演者らは以前、コンベンショナルな環境中で飼育されたNCマウスのうち、ハツカネズミケモチダニに感染したマウスのみが重篤な皮膚炎を起こすことを認めた。このダニに感染したマウスには、ダニ種に特異的な抗原によって惹起される受身皮膚アナフィラキシー反応を起こす抗体の産生が認められ、また、ELISAにてもこのダニ抗原に特異的なIgEおよびIgG1抗体価の上昇が認められた。これらの結果から、皮膚炎の重篤化には、ダニに対するアレルギー反応が深く関与していると考えてきたが、このたびNCマウスの飼育環境を、入室者制限やディスポーザブル手袋の着用義務などを設けた、以前よりややクリーンな環境に変更したところ、ハツカネズミケモチダニ感染マウスにおいて重篤な皮膚炎を呈する個体の割合が極端に低下してしまった。重篤化した個体は、同一のケージ内で飼育されているマウス群中に認められる頻度が高く、全く皮膚症状が認められないケージのほうが多く認められた。一方、皮膚症状をほとんど呈しないダニ感染マウスにおいても、ダニ抗原特異的IgE抗体価の上昇が認められるため、アレルギー状態は成立していると考えられた。近年、黄色ブドウ球菌の産生するプロテインAの塗布により、いわゆる1型アレルギー反応を介さずにアトピー性皮膚炎様症状を惹起できることが報告されたが、ハツカネズミケモチダニ感染マウスにおいても皮膚炎の重篤化の要因が、ダニ感染以外にある可能性が示唆された。

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