兵庫県北部円山川の河口付近にある中州・菊屋島で大平肺吸虫Paragonimus ohiraiの第2中間宿主であるクロベンケイガニSearma dehaaniの生態,メタセルカリア寄生率,第1中間宿主のムシヤドリカワザンショウAssiminea parasitologicaの生態を調査した.この地域のおけるクロベンケイガニのメタセルカリア寄生率の変動は5月から6月は80%台で7月から9月にかけて90数%と高い寄生率の変動を示した.クロベンケイガニ活動状態はカニカゴトラップの採集個体数からみると,7月下旬から9月中旬に盛んであった.また冬期にクロベンケイガニを採集して,大きさの分布から個体の年齢を推定して年齢とメタセルカリア寄生率の関係をみた.ムシヤドリカワザンショウの生息はアシ原の外側や朽木にみられ,密度の高いカワザンショウとは異なっていた.セルカリア寄生は9年間の調査期間中,1個体で確認できただけであった.ムシヤドリカワザンショウのセルカリア寄生率が極端に低いことを踏まえ、カイ以外の生物の関与を推察した.予備実験としてセンチニクバエのミラシジウム伝搬の可能性を考えた.カニからメタセルカリアを摘出し,ラットに感染させ,得られた虫卵をミラシジウムまで発育させてセンチニクバエに感染させた.実験は結果を得る前に感染個体が死亡して失敗したが,その経過について報告する