日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第63回日本衛生動物学会大会
セッションID: A24
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第63回日本衛生動物学会大会
岩手県におけるヒトスジシマカ分布調査(2010年)
*佐藤 卓松本 文雄安部 隆司二瓶 直子小林 睦生
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抄録

近年生息北限が北上しているヒトスジシマカについて、節足動物媒介性ウイルス疾患の予防対策に資するため、2009年に引き続き岩手県内における生息分布状況を明らかにするとともに、気温等の生息条件との関連を検討した。2010年6~10月、岩手県内10市6町の計146地点において、古タイヤなどのたまり水に生息している蚊の幼虫等をピペットで採取し、室内で羽化させた成虫を形態学的に鑑別を行った。また、2009年の調査で生息北限であった盛岡市仙北町を中心として半径約100mの範囲の各戸を対象とした詳細な生息調査を実施した。GISを用いた生息条件等の解析には、年平均気温、10.8℃を閾値とした有効積算温度、日平均気温が10.8℃を超えた日数及び1月の平均気温(それぞれ、1kmメッシュ気温データの2006~2010年の平均値)を用いた。解析にはGISWAY-light Ver.2.2.4を用いた。本調査でヒトスジシマカの生息が確認された地点は、盛岡市など4市1町の計36地点であり、北限地点は盛岡市玉山区(E141°10′33″N39°51′28″)で2009年に比べて更に約20km北上した。盛岡市仙北町においては、2009年に採集された地点で7月にすでに幼虫が確認され、各戸調査で39地点のうち24地点において同蚊の生息が確認されたことから、盛岡市では同蚊がすでに定着しているものと推定された。盛岡市玉山区及び盛岡市仙北町とも、2009年の調査で生息条件のひとつとされた「10.8℃を閾値とした有効積算温度1,300℃日以上」という条件を満たしているが、年平均気温はそれぞれ10.2℃、10.8℃、1月の平均気温はそれぞれ-2.2℃、-1.6℃とこれまでに同蚊の定着が確認された地域より寒冷である。今後、一時的な生息か定着かを確認するため、さらに調査を進める必要がある。

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