日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第63回日本衛生動物学会大会
セッションID: A32
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第63回日本衛生動物学会大会
新型走査電顕像によるマダニ幼虫の有用分類の試行
*矢野 泰弘藤田 博己高田 伸弘
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抄録

マダニ媒介性疾患の疫学的調査を行う場合、最初に直面する作業は採集したマダニ類の種同定であろう。特に幼虫の同定に関してはその大きさから検索がしばしば敬遠される傾向にある。この度、本学に導入された走査型電子顕微鏡(JSM-6390)では低真空での観察が可能になり、従来の作業工程の一部を省略できる。また、写真をデジタルデータとして保存可能になったことで、パソコン画面上で写真のコントラスト調整やトリミングが容易に行える。そこで、今回の報告ではHaemaphysalis属のマダニから徳島県産キチマダニ、岡山県産フタトゲチマダニ、および兵庫県淡路島産のツノチマダニの幼虫を材料にして、その作業効率や写真の分解能などから、同定・検索に対して有用に活用できるか検討してみた。マダニの固定と脱水をエタノール系列(80%-90%-95%-100%)で行い、それらを試料台に両面テープで接着させた。その後デシケータ内で一晩置き、乾燥させた。チマダニ属幼虫の触肢外縁の形態は直線状(キチマダニ)、円弧状(フタトゲチマダニ)、および第2節の突出(ツノチマダニ)に区別できた。顎体基部角状体の形態はそれぞれ、先端鋭利な三角形(キチマダニ)、僅かな隆起(フタトゲチマダニ)、および丸みのある小さな膨らみ(ツノチマダニ)を呈した。また、第1脚基節内棘の形態も種ごとに特徴が見られた。試料ごとに電子線量の調整は必要であったが、電子線のチャージも少なく、同定に必要な良好な像が得られた。ただ充分に固定されて無い場合、マダニが乾燥によって変形することもあるので、今回はアルコールに浸す時間を長めに調整した(数時間~半日)。さらに、デジタル画像処理では従来の暗室作業と比べて作業効率が飛躍的に向上した。

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