日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第63回日本衛生動物学会大会
セッションID: B05
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第63回日本衛生動物学会大会
マダニ宿主探知プロセスに関与する候補分子の検証
*山地 佳代子芳賀 聡石崎 宏
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抄録

家畜に甚大な被害を引き起こすマダニは、宿主から得た血液を唯一の栄養源として生活史を維持していることから、宿主探知プロセスは生存に必須であると考えられる。しかし、マダニの宿主探知プロセスを支える分子基盤やメカニズムはほとんど解明されていない。蚊などの吸血性節足動物の宿主探知行動には炭酸ガスの感知だけではなく、嗅覚系の働きによる宿主の匂い成分の感知が関与していることが示唆されていることから、マダニにおいても嗅覚系の情報伝達を阻害・遮断または撹乱することは有効な防除法の一つとなり得る。我々は日本優占種であるフタトゲチマダニHaemaphysalis longicornisを用いて、マダニの宿主認識において中心的役割を担う臓器として知られるハラー器官から、嗅覚レセプターが属す7回膜貫通Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)の単離を試みたので報告する。本研究で新規に単離したGPCR候補遺伝子は、7回膜貫通型を保持すると推測され、ホモロジー検索において既に報告されている節足動物の嗅覚レセプター候補遺伝子に高い相同性を示した。また遺伝子発現解析ではハラー器官のある第一肢において発現が確認されたが、第二肢、第三肢、第四肢においては発現が認められなかった。以上の結果より、今回単離したフタトゲチマダニGPCRはハラー器官において嗅覚系の機能に関与する可能性が推測された。現在、得られた配列を基に抗体を作製し、フタトゲチマダニGPCRの局在の検証を進めている。

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